インドとパキスタンの国境で毎日やってる「ヤバい儀式」を見に行こう

世界中に存在する旅の穴場
下川 裕治, 室橋 裕和 プロフィール

室橋 ロシアはビザもずいぶん簡単になって。いま、オンラインで簡単に取れるんですよね。

下川 そう。あのウソっぽいビザ、いいですよね。なんかちょっと好き(笑)。

室橋 僕の周りでも、「最近、行ってきたよ」という話がやたらと多いのが、ウラジオストクです。ビザが簡単に取れるし、船でも行けますし、飛行機でも2~3時間で行ける。実は日本から一番近いヨーロッパ。街並みも綺麗で、昔ながらの建築物がたくさんあったりします。

僕の知り合いはこの前、2歳の子供を連れて、ベビーカーで行きました。とても楽しかったそうです。ロシアは僕も狙っているところで、今度行ってみたいなと思っています。

下川 そうですね。ロシア料理、とくにシベリア料理は美味しいですよ。日本人には非常に口に合います。それから、そういう無骨さというか、融通の悪さからいうと、東欧がいい。

だから、東欧からロシアにかけてですね。あのエリアの人たちから、中央アジアを含めたエリアというのが、シニアにはいい。タイや東南アジアはちょっと進歩しすぎたという感じがします。

 

「ナショナリズムってこういうもの?」

室橋 下川さんが仕事を抜きにして、ほんとに何もない状態で、普通にただここに行きたいと思って行くとしたら、どこが良いですか?

下川 ときどき言われるんですが、ギリシャ。アジアじゃないんです(笑)。

室橋 下川さんの口からギリシャですか! 理由は?

下川 こっちの考えが通じないからというのが大きいです。外国暮らしを楽しむコツは言葉が通じないことだと思いますね。今の時代、言葉がわからなくても、ものを買ったり、何かするぐらいのことはできますよ。グーグル翻訳もあるし、そのレベルではもう心配ないです。僕は年を取ったら、ギリシャに住みたいなと昔から思う。

あとね、この前ちょっとおもしろいところへ行ったので、ご報告します。パキスタンとインドの国境に毎日8000人ぐらい集まっているんですよ、いま。何をやっているかと言うと、フラッグセレモニー。

国境ギリギリで、夕方、国境が閉まるときに、ただ旗を降ろすだけなんです。そのためにインドのツアーバスで来る人もいます。

8000人が集まるフラッグセレモニー(photo by iStock)

そこで、「インド万歳!」って、みんなで叫ぶんです。かたや国境の向こう側では、「パキスタン万歳!」とやっている。あまりにもこっち側の声が大きいので、向こう側の声は聞こえないんですけど、毎日叫んでいるんです。彼らはそんなにストレスが溜まっているのかと驚くんだけど、隣国同士で言い合っているんですね。

パキスタンとインドって喧嘩する仲じゃないですか。戦争というか、領土問題を抱えている仲というか。彼らは大きな戦争をしないから、毎日少しずつぶつかっている感じがあるんだけど。そこで国境の端まで思い切り旗を持って走って、次の人に渡す。

運動会と同じですよ。これが楽しくて、楽しくて仕方がないらしいのね。同じことをパキスタンでもやっているんだから。

インド側から行くとアムリトサルからラホールに抜ける国境で行われていますが、そのイベントが始まると、越境の手続きをしてくれなくなります。5時まで国境は開いているんだけど、僕らは3時ぐらいに行ったら、「あと1分で閉めちゃうぞ急げ、急げ」と。旗の応援に行っちゃうから、なんです。

夕方5時からだいたい始まって、国境の両側はお祭り騒ぎになって、市場も出ます。毎日ですよ。最後には兵隊が来て、きちんと儀式に則って旗を降ろして終わりというようになる。入場無料です(笑)。

ですので、もしその国境を越えることがある人がいたら、夕方その近くで泊まる日程にすると、すごいものが見られます。たぶん向こうとこっちで大声出し合っている国境は、世界でいまここだけじゃないかなと思います。

「ナショナリズムってこういうもの?」とか、とにかく笑っちゃうような、やや深刻になるような、いろいろ考えさせられます。昔はただの国境だったんですよ。ただ通過するだけの国境だったんですけど、今はスタジアムみたいですから。

このセレモニーは、これからもっと大きくなっていくような気がしますね。感覚的には、サッカーの試合で国と国との試合をやるのを応援するのに似ている感覚がある。それを毎日できるのが楽しくて仕方がないような感じがあるので、もしそちらに行かれる方がいたら、ぜひ行ってみてください。

室橋 最後に良い情報が聞けました。最後まで熱心に聴いてくださったみなさん、本日はありがとうございました。