日本で100年以上前から横行していた「入試不正」驚愕の実態

150名中100名が不正のケースも…
岡本 亮輔 プロフィール

許されるべきではない

問題漏洩や点数答案の改竄のほとんどは出題側の協力を得て行われ、見返りとして金銭授受がある。受験者と出題側のあいだをつなぐブローカーが介在する場合もあるようだ。

ただ、ブローカーの存在が明るみに出るのは、多額の金を払って依頼したのもかかわらず不合格になってしまった時に告発される場合が多い。

そもそもブローカーに出題側とのコネがあったのか、それとも最初から金銭詐取を目的としているのか見極めは難しい。

出題側とのコネがつけられない時には、まるで映画のような盗みが行われたこともある。舞台となったのは1970年代の大阪刑務所だ。事件は殺人事件から始まる。

 

西区の路上に停車した車から40代男性Aの遺体が発見され、殺人事件として捜査が開始される。次第に明らかになったのは、刑務所で委託印刷された入試問題の盗難であった。

殺された男性も、殺人容疑で逮捕されたBとCも、いずれも大阪刑務所の元囚人であった。

3人が服役中、まもなく出所になるAはBとCに問題の盗み出しを持ちかける。Aの出所後、BとCは刑務所内の印刷工場で刷られた大阪大学や大阪市立大学の入試問題を盗み出し、バレーボールの時間に運動場から試験問題を入れたボールを刑務所外に投げ出したのだ。

Bの出所後も、まだ服役していたCが同じ手口で入試問題を盗み続けた。ただし、Aは問題そのものを売ったわけではない。

受験生を大阪市内のホテルに集め、試験前日まで勉強させ、対価として1人につき1000万円程度を得ていたのだ。問題さえ盗んでいなければ、入試直前の合宿勉強だろう。

しかし、Aが多くの儲けをとったため、殺人に至ったようである。

その後も現在に至るまで、多くの不正が繰り返されてきた。あってはならない領域での不正であり、許されるべきではない。

公正な採点をされる受験者の権利の侵害であるのはもちろん、公正な採点体制の構築に努めてきたほとんどの採点者の努力を踏みにじるものだ。

発覚のリスクやコストに見合う「成果」が求められるため、事件の舞台になるのはレア度の高い資格が得られる医歯薬系や名門大学が多く、社会的影響も大きい。

時代とともにますます不可視化する不正だが、厳格に取り締まるシステムが不可欠だろう。

【参考文献】
宮崎市定『科挙―中国の試験地獄』中公新書
岩井洋『記憶術のススメ―近代日本と立身出世』青弓社