リタイアしたら、『地球の歩き方』にも載っていない町に行ってみよう

世界遺産を見なくてもいいじゃないか
下川 裕治, 室橋 裕和 プロフィール

迷い、寝ることも旅の楽しさ

室橋 3~4年前、香港・マカオを取材する機会で下川さんとご一緒させていただきました。今でしたら当然皆さん、ネット予約サイトを使って、ホテルをとって進んでいく。バックパッカーでもそういう人が多くて、ドミトリーのベッド一つで予約できる時代なので、そうやって進んでいく人が多いでしょう。

僕らは昔ながらの感じで、マカオの安宿街を飛び込みでホテルを探していったら、あまり空いていなかった。そこで下川さんが、「僕、もうここでいいよ」と言い出したのが、かなり激安なボロボロのオンボロ宿。しかもエアコンがなかったんです。そのときのマカオは、むちゃくちゃ蒸し暑かったんですね。

「下川さん、ここでいいんですか?」と。下川さんは取材の後はちゃんと別件の執筆もあるし、かなり忙しく旅をしているんですけど、それでも「大丈夫、大丈夫!」と言いながら、けっこううれしそうな顔をしていたのを、僕はよく覚えています。

下川 何ていうホテルだったかなあ。

室橋 福隆新街という裏町にあって、昔の赤線地帯なんですけれど、土産物屋とか、ちょっとしたレストランとか、安宿が広がっている。あそこにしたってマカオはかなり高いんです。下川さんが泊まったあのボロボロのエアコンのないところで、3000円とか、4000円とかね。

下川 そうそう。そんなに安くはないんですよね。

室橋 それでもマカオでは一番低いほうでした。ドミトリーには最近泊まりますか?

下川 いや、僕ね、昔からドミトリー、苦手なんですよ。なんかね、性格が良くないので、人と顔を合わせるのがいやなんです。だからなるべく避けてきたので。僕は若い頃からそうなので、ボロボロの部屋でも、安い個室を選んだタイプです。

室橋 なるほど。シングル派ということですね。

下川 そうそう。

タイではクアクリンなどの激辛激旨料理にも挑戦!(写真:室橋裕和)

室橋 旅を始めた頃って、迷うとビビるじゃないですか。でも最近は楽しいですね。「あっ、道わかんない、どうしよう」っていう、ちょっとマゾ的な感じかもしれないんですけれど。いまはいざとなったらグーグルマップがあるし、そんな手助けしてくれるツールもたくさんあるので、迷うことが旅の一つの楽しさだったりします。

わけのわからないところまでとりあえずバスやタクシーで行ってみて、そこから歩いて、迷いながら戻ってくるみたいな旅が好きだったりするんです。ガイドブックには載らない、普通の市井の街角というか、市場だとか、そういうものを見ながらウロウロするのがけっこう楽しかったり。

そういうのは若い頃にはあまりなかったような気がしますね。若い頃は観光地・観光地・レストランみたいな、目的地をつなげていって旅をしていくだけで、結局ひとりツアーをしていたような気はしないでもないです。今のほうが少し自由になったような感じはちょっとあります。下川さんは、そのあたりどうですか?

下川 昔よりそこらはもっと激しく、そして昔以上に何もしなくなってきているというのはある。まあ、海外へ出ると、僕はよく寝るし、だいたい1日に3回は寝ている(笑)。昔も旅先でよく寝たタイプなんだけど、ますますその傾向が強くなってきて、昔よりもやっぱりもっとダメな旅行者になってきていると思いますね。

室橋 下川さんはいつも言われていますけど、世界遺産なんか、全然興味ないんですよね。徹底して行かないですよね。

下川 面倒くさい、行くのがね。興味はないわけじゃないんだけど、行ったところでよくわからないというほうが強い。さっきのブラブラ歩くというのは、たぶん僕はずっとそういう旅行をしているんです。どこどこへ、決められたところに行かなきゃいけないというのがイヤなんですよね。

ホテルの予約をなぜ取らないかというと、そこへ行かなきゃいけないというのがイヤなんです。

駅や空港に着いて、そこでいろいろ探して、何かいいところがあれば泊まればいい。町の中をフラフラ歩くだけでいい。別に観光地とか、世界遺産に行かなくてもいいなと思います。

                    対談は8月9日公開予定の後編へ続く!