セーフティネットがある組織作り

さて、ここで一つの疑問が生じるかもしれない。「組織が個に合わせる時代」というのであれば、なぜ個人が「もっと働きたい」と思った時に、それが認められないのか。活きの良い若手社員から「もっと働きたいのに、働き方改革で働かせてもらえなくなった」という不満もよく聞く。

「個が組織に合わせる」時代の場合、組織にとっての最適解が優先される。それは、一人でも多くの社員が、長時間・ハイパフォーマンスで働いてくれることだ。

一方、「組織が個に合わせる」時代の場合、個人一人ひとりにとって何が最適であるかが優先される。

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「残業規制」とは一種のセーフティネットだ。

「個人が好きなだけ働けるが、そのようなセーフティネットが全く機能していない組織」と「個人の裁量が若干制限されるが、そのようなセーフティネットがきちんとある組織」のどちらで働きたいと思う者が多いか。多くの人が選ぶのは、おそらく後者だろう。「個」に最適化された組織であればあるほど、最低限のセーフティネットが保証される流れになるはずだ。

また、そもそも社会制度というのは、弱者に合わせるべきものだ。際限なく残業が認められる(正確には認められていなくても、抜け穴が無数にある)組織が、山のように存在していたということは、この国の「社会政策」が脆弱であったということを意味していたにすぎない。

このような残業規制の強化は、先進国に本来あるべき社会政策が、ようやく日本にも浸透し始めたということだ。

このように、今後組織はどんどん個人に合わせていく。そうでなければ、若者は去っていくだろう。そしてそれは企業だけにとどまらず、学校を含めて、全社会に広がっていくと思われる。