大企業よりスタートアップを選ぶ若者たち

働き方改革が示すものは、時代の大きな変化だ。「個が組織に合わせる」のではなく、「組織が個に合わせる」時代の到来である。現在34歳の私を含め、 最近の20代・30代は、失われた20年の中で育ち「大企業で働くことが幸せ」とは思えなくなった世代であり、「個性を大事に」と言われて育った世代でもある。

自分のアイデンティティと会社を完全に一致させるのではなく、自分の人生を最大限幸福に生きるために組織は存在する。そういう認識を少なからず持っている。

しかしながら、多くの企業は、この「組織が個に合わせる」時代の到来に合わせきれていないように見える。私は日本の大企業を対象に発達障害についての研修などを担当することもあるが、「最近の若い社員は飲み会に誘っても来ない」「最近の若い社員は下積みを嫌がる」などの不評を聞くこともある。

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「組織が個に合わせる」時代への変化を理解した上で、「会社のカルチャー」それ自体を改革していかない限り、働き方改革は不完全なものに終わるだろう。

実は私自身、リーマンショック直後に新卒で入社した総合商社を4ヵ月でうつ病で休職した経験がある。

「配属は人事部が決める」「会議がなくても朝定時に来る」「ランチタイムは決まった時間にとる」「内勤でも革靴とスーツ」など、私にとって意味が分からないルールが多すぎたことも、一つの原因だった(結局私はその大企業を退職し、起業することになった)。後に私は「発達障害」と診断され、なぜ大企業でやっていけなかったのか様々な疑問が氷解するのだが、その話は拙著『暗闇でも走る』にて書いたので割愛する。

しかし最近若者たちと話していると、かつての私と似たような価値観を持つ人が多いことに気づく。例えば、当たり前のように大企業とスタートアップを対等に比較し、時にスタートアップを選ぶ者も増えてきた。

そのようなスタートアップは、給与水準や安定という点では古くからの大企業と比較して劣る部分もあるが、その分個人の給与以外の幸福を最大化させようとする。

1on1(一対一の個人面談)を通じて上司は部下に常に承認を提供する。在宅ワークなどを認め、各々の家庭環境に最適化された働き方を認める。服装などもできる限り個人の自由に任せる。飲み会や会社イベントの参加は自由。

肌感覚でしかないが、「給与が多少減っても、そのような自由でフェアな環境の中で、個人の幸福を最大化したい」と思う若者は増えているのではないか。もしかしたら、34歳の私の年齢を狭間として、その上の世代と下の世代で圧倒的な断絶があるかもしれないと思う。