
福島の茶畑における茶樹各部の放射性セシウム量を調べると、通常出荷される葉層部に37%、その内側の枝部に37%、さらに内側の太い枝や幹に20%、地下にある部分に6%という分布がわかりました。
茶生産においては、茶摘みのあとは刈り込んで、新しい枝を出すという作業が標準的です。その刈り込みを、葉層部だけでなくその内側の枝部まで深く刈り込むことで、茶樹全体の放射性セシウムを4分の3ほど除去できそうだ、ということがわかりました。
そして、この対策が約2万haの茶畑に対して施されました。

対策を早期に実施したことが功を奏し、茶では2012年度以降、基準値の超過を防ぐことができています。
ではここからは、特に事故時の放射性物質の大気放出が収まった後で重要になってくる、土壌から農作物へ移行する放射性物質の話を詳しく扱っていきましょう。
「移行係数」で〈土壌→植物〉の数値を知る
前編でも述べた通り、土壌を汚染した放射性セシウムは土壌粒子のフレイドエッジサイトに強く吸着する性質があり、雨が降っても鉛直方向にすぐに下がることはありません。
しかし一方で、すべての放射性セシウムが土壌粒子に吸着し続けるわけではなく、一部は植物に吸収されます。
では、土壌中の放射性セシウムは、どの程度植物に吸収されるのでしょうか。その吸収の割合を正しく評価するために用いられているのが「移行係数」というものです。
移行係数とは、植物体の放射性核種の放射性物質濃度[Bq/kg]を、土壌の放射性核種の放射性物質濃度[Bq/kg]で割ったものです。

係数といっても常に一定ということではなく、植物の種類や土壌の条件によって異なります。
しかし、ある植物の移行係数を把握していれば、基準値内に収まるために土壌の放射能をどこまで低減させればよいかの指標になります。
ここでは一例として、玄米の移行係数を考えてみましょう。