高田馬場の真ん中に現れた「中国」異色の新ラーメン店に潜入してみた

この国の変化の兆しが見える店
堀井 憲一郎 プロフィール

ちょっとアウエーな雰囲気

ラーメンの街の麺類として食べると(ラーメン調査員として行っているので)、まあ、日本のラーメンと比較してもしかたがないとはおもうが、スープにコクがないし、麺にも工夫がない。勝負になるレベルではない。

でも中国人の多い街高田馬場の店としては、たぶん正解だろう。中国人が居心地がよさそうだった。日本人は、かなりアウェー感を感じます。

「沙県小吃」はけっこう行列ができてる。中国ではかなり有名店で、その日本での初めての店らしい。だいたい映画館の早稲田松竹の向かいあたりです、でも、日本人がわざわざ電車のってやってきて食べるほどのものではないとおもうけどね。

中国人なら、電車のってわざわざやってきて食べるほどのもの、みたいだ。

不思議な店である。少し考えさせられる。

中国人が、日本人をまったく相手にしない中国人向けの店を開こうとしているという空気が少し衝撃であった。うちの近所で、観光客気分(しかも不安な方向のやつ)を味わえるのだ。海外の食堂で、注文したのはいいが、おれはまちがってたんじゃないかとおもってしまう、あの、不安である。

おもしろいといえばおもしろいが、なかなか奇妙である。

店内の客も大半が中国人なので、かなり疎外されている気分にもなる。

ただ、お客さんはたぶん留学生などが多く、つまりみんな中国語で話してるけど、こちらが「ちょっとすみません」と通ろうとするとすぐに「あ、ごめんなさい」と日本語で返してくれるやさしげな人たちが多い。

でも、疎外感は疎外感である。

たぶんメニューや、看板や、そのほかの文字がわからない、というところが大きいのだとおもう。文字が読めないと人間、かなり不安になる。まだ英語だけのほうが不安にならないだろう。

 

これまでだったら成り立たなかったタイプの店

これまでも高田馬場では、中国人が出しているラーメン店はいくつも見かけてきた。ただ、あくまで日本人向けのラーメン店を出して、日本で成功したい、という気配の店だった。私の見る限り(ここ7年くらい高田馬場・早稲田間にできたほぼすべてのラーメン専門店を把握してるつもりだけど)、だいたい失敗している。

想像する風景としては、あいだに立った口がうまい中国人の口車に乗せられて(高田馬場でラーメン店やれば絶対成功するよ、家系ラーメンってのやれば必ず大儲けだね、というような口舌)、それにうかうかとのっかってやってきてしまったというものである。でもまったく客が来ずに、3ヶ月から6ヶ月で、ほぼ遁走してしまう。そういう店を何軒も見てきた。

ところが2018年になって、もう日本人相手ではなく、こちらにいる中国人だけ相手にすれば成功するかも、という店が出てきたのだ。そして、その2軒は、いまのところそこそこ成功している。かつての失敗店をいやほど見てきたから、それと比べればすごく混んでいるのがわかる。半年で逃げ出すことはないだろう。

あきらかに何かが変わってきている。

日本では日本式で商売しなければいけない、という感覚が捨てられ、日本にいる中国人相手でも商売は成り立つ、と考え出したのである。やり始めたところは、まず成功している。慧眼ということだろう。

高田馬場はミャンマー人も多いエリアである。日本人以外の住民が多い。

ただ、国際都市というような風貌でもない。

古くからの住民は、下町ぽい心情の人たちが多い。

そのエリアで「日本人が入りにくい中国人向けの店」が開かれ、いわば中国人たちだけの空間が作られているのだ。どうなるのだろう。少し心配でもある。

また、中国人が日本をどう考えているのだろう、と座っているだけで考えさせられる店でもある。不思議な方向に日本が回転している気がしてしまった。