高田馬場の真ん中に現れた「中国」異色の新ラーメン店に潜入してみた

この国の変化の兆しが見える店
堀井 憲一郎 プロフィール

スープは基本がけっこう辛いので、辛味を入れると、どんどん辛くなっていく。この、自分で辛さをどんどん増やしていけるってのが、いいところなんだとおもう。真っ赤なスープにしてニコニコしている中国人の若い娘さんも見た。

具材やトッピングの選び方で雰囲気が変わる

スープは、どんな具材が来ても大丈夫なように作ってあるから、日本のラーメンのスープとは違う。どっちかってえと、「鍋のつゆ」みたいなものだ。

はっきり言えば、深みもコクもない。そんなものには興味がないんだとおもう。ここは日本ではないから。日本ラーメンの鶏ガラや牛骨や豚やらの濃い味が複層的にからまってくる、というやつではない。あっさり、単純な味。

これは、ラーメン激戦区で勝ち残れるような味ではないとおもったけど、それは考えてみれば大きなお世話で、勝手に私が「ラーメン激戦区に殴り込みをかけた中国のラーメン店」だと勘違いしているからである。実態は「中国人の客がたくさん見込める高田馬場エリア」にやってきた「完全な中国人向けの店」でしかなかったのだ。

つまり、日本人客は、最初から計算外のようだ。来てもらっていいんだけど、でもそこがターゲットではないので、日本人にはやや不親切である。タイミングによっては絶望的に不親切なこともありそうだ。でも同胞中国人が来てくれるから、だいじょうぶよー、という雰囲気がしている。

 

「バンメン」(480円)に挑む

「沙県小吃」は[SHAXIAN SNACKS]とある。スナックだそうだ。でもカラオケはないし、ママもいません。軽食店ってことでしょうね。

こちらは、かなり有名な店らしく、開店したとき、すごく行列が出来ていた。そして行列はどう見ても中国人だけの行列だった。

ここはもう十年以上ずっとラーメン店だったところで、古くは大分ラーメンをやっていて、とんこつ大学になって、豚マックスに一瞬なって、ハルクだったところである。

そこまできちんとこの店の素性来歴を覚えているのが自分でもすごいとおもう。豚マックスは一瞬で消えたな。大分ラーメンだったのはたぶん2010年ころだ。ずっと昔から2階もある店で、家賃が60万円少々くらいだった(インターネットで居抜き物件として出ていたのを見かけたことがある)。

「沙県小吃」では、メニューでも券売機でも「バンメン」が一番上にある。

バンメン。

よくわからない。でも480円と安い。

ほかにはワンタンと、蒸し餃子がある。だいたい480円である。ワンタンとバンメンセットがあって、それが券売機の一番目立つところに位置していて880円、単品2つ買うより80円ほどやすい。

券売機の目立つところにある大きなボタンはだいたいトラップであることが多いのだけど(デフォルトの食品ではなく、ちょっと高いやつがその位置にある意地悪なラーメン店が多い)、でも、見渡すかぎり、腹がふくれそうなのはそのセットだけなので買ってみた。

出てきたバンメンは、「替え玉」みたいだった。博多ラーメンで替え玉を頼むと、皿の上に盛った麺だけが渡されるが、そのように見えたのだ。替え玉よりは量は多いけど。

バンメンがきた! 一瞬、替え玉かと思う

えっ、これ、どうやって食うんだろう、と一瞬戸惑う。

じつは下にソースがあって、麺がのっかっていてソースが見えないだけである。混ぜないといけない。いわゆる「混ぜそば」みたいなものである。でも、日本の混ぜそばはもっと麺が太い。博多ラーメンのような細さだった。つまりこれ食べても全然、腹がふくれないのだ。いいんだろうか。