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ドイツとギリシャが教える「ペット殺処分がなくならない日本」の異常

日本にはその「仕組み」がない
有馬 めぐむ プロフィール

最初はアテネ都心のある地区の250頭を対象とし、治療や訓練を受けて戻ってきた犬たちに問題行動がなかったため、反対派の人々も理解をみせ始めた。徐々にアテネ市全域に広げ、翌年のオリンピック開始までには機能させることができた。

そうして年々順調に機能していった保護プログラムだったが、まだ道半ばの側面もある。2012年、ギリシャ政府は全国の自治体にアテネ市と同様のプログラムを2年以内に導入するように指示したが、財政危機の影響もあり、機能していない地域も多い。

また地方ではTNR活動の重要性などもあまり理解されていない。

アテネ市保護下の野犬の数は減少傾向にあるが、全国的には飼い主のいない犬の数は経済危機後、増加しているという報告もある。今後、地方でも行政や動物保護団体がもっと啓発活動をし、アテネと地方の格差を解消していくことが肝要だ。

 

大きな違い、ペットショップという存在

ここまでドイツ、ギリシャの実態を紹介してきたが、さらに両国ともに「犬猫の生体販売をするペットショップがほとんどない」ということはご存じだろうか。

ドイツにはペットの食料やグッズなどを販売するペットショップはあるが、生体販売はほぼ皆無である。犬や猫などが入れられるケージの広さに基準となる数値が、法的に定められているからだ。違反者には法的に罰則が設けられている。これによって実質的にペットショップでの生体販売は難しくなる。なぜなら、採算がとれないからである。

ブリーダーも存在はするが、繁殖の制限は法律で定められているので、劣悪な状況下で繁殖が行われていることはまずない。また8週齢未満の子犬や子猫を親や兄弟から引き離してはならないという「8週齢規制」が定められている。そしてブリーダーやペットショップはライセンス制であり、資格がある者しか動物取扱業を営むことはできない。

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ギリシャでも2004年アテネオリンピックの前年に犬の繁殖の制限や8週齢規制、動物取扱業のライセンス制などは法律化された。厳しい罰則が定められていなかったために生体販売を行うショップは存在していたが、12年、14年の動物保護管理法の法改正で飼育条件の細則が定められ、違反に対する罰則が強化された。

法改正後、全国で犬猫の生体販売をするペットショップは年々減っていき、現時点においてはほぼ見当たらなくなった。また、2012年の法改正では、欧州で初めて、サーカスなどでのすべての動物の商用利用を禁じた。これはドイツ連邦動物保護同盟にも高く評価された。

一方、日本はといえば、多くの先進国で定められている繁殖の制限、8週齢規制、動物取扱業のライセンス制がいまだに実現していない。つまり、大量に犬猫を殺すことになりかねない流通過程や構造的な問題点が規制されていないままなのだ。よって悪質な業者が何度も繁殖をさせて、“大量生産”し、行政に売れ残りを持ち込むという事態が起こっていた。

法改正で行政に持ち込めなくなると闇の「引き取り屋」に持ち込んだり、大量に遺棄するという犯罪行為を行う業者もいる。「動物の命を大切にする」という感覚よりも、いかに売りさばき儲けるかというビジネス感覚が支配している。

2016年5月、NHKの「クローズアップ現代+」でもペット流通の問題が取り上げられた。それによれば、犬猫を合わせたペット市場の規模は年間1兆4000億円にも達するという。最近の出版業界の市場規模と同程度であることと比較すると、いかに巨大な市場なのかがわかるだろう。2020年にオリンピック・パラリンピックを行う日本で、このアニマルウェルフェアの意識の低さを見て、世界の人々は何を思うだろうか。日本は動物保護のための法規制に向けて舵を切らなければいけない時期にきているように感じてならない。