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ドイツとギリシャが教える「ペット殺処分がなくならない日本」の異常

日本にはその「仕組み」がない
有馬 めぐむ プロフィール

ドイツの「動物保護法」と「狩猟法」

ドイツが動物保護先進国と呼ばれるふたつ目の理由は、本格的な動物保護法制度にある。ドイツではすでに1933年に体系的な動物保護法を制定。その内容を引き継いだ1972年の正式な動物保護法制定後も何度か改正され、現在に至る。

動物保護法だけではなく、2002年には、憲法に「動物保護」が導入された。さらに政令や州の法律でより詳細なことが定められた。たとえば、犬の飼育については毎日の散歩、居住空間の広さなどは数値を設けて細かく決められている。このように動物保護法だけでなく、相互に影響を与え合う多層的な法制度を整えているのがドイツなのである。

一方、日本ではこのようなドイツの「殺処分ゼロ」の実態が美化されすぎている側面があるのも事実である。なぜなら、ドイツには「狩猟法」が存在するからだ。

原則、殺処分ゼロではあるが、狩猟法に基づき、狩猟ができる地域において犬や猫が駆除されるという事実はきちんと伝えておくべきだろう。全国の統計はないが、州によっては駆除された犬猫の数を発表しており、相当数の犬猫が駆除されている。ドイツ連邦動物保護同盟は、狩猟法によるこの駆除を批判し、狩猟法の改正を求めている。

 

オリンピックを機に変わったギリシャ

では、ギリシャはどうか。じつはギリシャは、「動物保護先進国」ドイツのように、体系的な動物保護法や組織的な動物保護活動の歴史が長いとはいえない。日本の状況とほぼ同様だったのだが、2004年のアテネオリンピックを機に、急速に動物保護制度を変革してきた「動物保護新興国」である。

アテネ市の野犬保護プログラムは、アテネオリンピックの前年に開始された。国際的なスポーツ祭典を控え、街を闊歩する野犬について大議論になり、一部では殺処分という声もあがった。しかし、アテネ市役所の関係者とアテネ市議会において大多数は殺処分に反対に回った。

もともとギリシャ人は、オリンピックが古代ギリシャのオリンピアの祭典をもとにしていることを誇りに思っている。1896年第1回近代オリンピックもギリシャで開催された。2004年の開催も喜ばしく、そのために動物を排除し、大量に殺処分するというのは健全でない、正当化されることではないという意見が多かったのだ。

こうして保護を前提として議論が進められ、法案が提出され、ギリシャ議会で審議、可決された。それによって、ギリシャでの動物保護の実態はどうなったのかといえば、路上などで保護された犬はシェルターで保護。約2週間で予防接種や不妊・去勢手術、マイクロチップの装着が行われる。

怪我や病気があれば治療し、攻撃的な犬は問題行動消去のための訓練を受ける。譲渡会やアテネ市のサイトなどで里親を募集、見つからなければ路上生活に即した交通訓練を行い、捕獲した場所へ戻す。

アテネ市の動物保護課が開催した犬の譲渡会の様子

その犬たちはアテネ市、動物保護団体、近隣の住民が世話をする地域犬となる。TNR(Trap捕獲/Neuter不妊・去勢手術/Return元の場所に戻す)は、 日本でも地域猫活動で行われているが、犬では珍しい。温暖なアテネの気候を利用したユニークな保護プログラムだ。