# 民営化

日本人は知らない「水道民営化の真実」フランスと英国で起きたこと

水道料金は上昇、嗤う投資家と株主たち
橋本 淳司 プロフィール

イギリスでは水道会社トップが「超高額報酬」

そうした中、いまイギリスでは再公営化の動きが高まっている。

1979年に就任したサッチャー首相は、新自由主義政策の元、電話、ガス、空港、航空会社、水道を次々と民営化した。それから30年以上経過した昨年秋、労働党は水道事業の再公営化をマニフェストに掲げ、直近の世論調査では国民の8割の支持を受けているのだ。

 

今年2月、「Finacial Times」紙は、水道事業のガバナンスの問題を指摘。追及の声は保守党からも上がった。マイケル・ゴーブ環境相は「9つの大手水道会社が2007年から2016年の間に181億ポンド(約2兆7150億円)の配当金を支払ったが、税引後の利益合計は同期間に188億ポンド(約2兆8200億円)」と発言。水道事業会社は巨額利益を株主配当と幹部の給与に費やし、税金を支払っていないと指摘した。

たとえばユナイテッド・ユーティリティー社のCEOの報酬は年間280万ポンド(約4億800万円)、セバン・トレント社のCEOの報酬は年間242万ポンド(約3億5300万円)などだ。さらに「水道事業会社は収益を保証して独占運営するという見返りに、水道会社は透明で責任を負わなければならない」と述べ、水道事業会社のガバナンス強化を水道事業の監視機関に求めた。

英国ではPFIそのものも疑問視されるようになっている。英国会計検査院はPFIの「対費用効果と正当性」の調査報告を行ったが、概要は「多くのPFIプロジェクトは通常の公共入札のプロジェクトより40%割高」というものだった。「英国が25年もPFIを経験しているにもかかわらず、PFIが公的財政に恩恵をもたらすというデータが不足」としている。

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国会審議はわずか7時間だけ

SPV(特定目的会社)とプロジェクトファイナンスの手法を用いるPFIは、株主配当や、資金調達のためのコストがかかり、そのために施設・サービスの利用料金や委託料が上昇した。現地の専門家のレポートによれば、英国では毎年18億ポンド(約2700億円)が水道運営会社の配当金として支払われ、また、水道運営会社の資金調達コスト(金利)は、公債の金利よりも毎年5億ポンド(約750億円)高くついているという。

つまり、英国の消費者は、公営水道が民営化されたことで、毎年23億ポンド(約3450億円)も余計に水道料金を支払わされ、それが投資家や金融機関に流れていることになる。

イギリスでPFIが進んだのは、ブレア、ブラウンの労働党政権の時代だった。EUの財政規律による制約下で短期間にインフラ整備を行おうとした結果、金融業界に取り込まれた。自治体の財源不足をPFIで克服しようとしている日本の状況に似ている。与党の中には、「日本のPFI推進は民主党時代に行われた」として、「いまさら反対するのはおかしい」という声が多いが、誰が言い出しっぺであろうと、失敗例のある政策を目をつぶって押し進めるほうがよっぽどおかしい。

日本の水道法改正の大半の内容は、水道事業の基盤強化を進めるものだ。事業の現状把握と将来予測、そして適正規模化をうながしている。そこに突如飛び込んできたコンセッション。前回の国会ではわずか7時間の審議で衆議院を通過。「長期間、民間に運営を任せることで、事業が不透明にならないか」、「サービス低下、不適切な料金値上げが起きないか」、「民間企業の倒産時や災害時の事業体制はどうするか」、「自治体に責任を残すというが、長期間民間に任せておいて、責任遂行能力は残るか」などの質問が出たが、明確な回答は得られなかった。

次期国会では他国の先例を検証しつつ、きちんとした議論が行われることを強く望む。