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4000人の元軍人らに取材して見えた「戦争と昭和史の本質」

若い世代に、いま伝えたいこと
7月に刊行された『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)が発売1週間で8万部を突破し、幅広い世代の読者から支持されている。これまでに戦前・戦後の重要人物やその関係者を4000人以上も丹念に取材し、昭和史を中心に数多くの著作を生み出してきたノンフィクション作家・保阪正康氏が、本書を執筆する上での経緯や思いを語る。

史実や体験から歴史を語る

昭和史に興味を持って調べようと思ったのは今から40年くらい前、30代半ばの頃でした。きっかけは、戦争が思想的に語られることへの反発でした。思想で戦争を語ろうとすると、「この戦争は侵略だ」とか「この戦争はアジアを解放するために必要だった」とか、一言二言で終わってしまいます。

 

でも、戦争はたくさんの人間が関わっていて、そしてたくさんの人が死んでいった。私は、戦争を体験し、戦争に翻弄された人々を、歴史としてしっかり語り継がなければならないなと思ったのです。

思想ではなく、史実や人間の体験を通じて歴史を語りたい。そんな思いが私の原点にあります。

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昭和40年代の終わりから50年代にかけて、私はかなりの旧軍人の方々に会いました。何百通も手紙を出して「取材させてください」と直接依頼しました。すると驚くことに、8割くらいの人は会ってくれるんですね。

特に佐官クラスの人に取材することが多かったです。佐官は将官の一つ下、尉官の一つ上の階級で、いわゆる中堅幕僚です。将官は命令するだけだけど、実際に戦争を動かすのは佐官なので、将官に聞くだけではわからない戦争のリアリティがあります。

本書は東條英機の話から始まります。私は昔『東條英機と天皇の時代』という東條の評伝を書きましたが、この時もたくさんの人に会って、7年くらいかけて取材をしました。

取材を通じてネタはたくさん持っていたのですが、評伝を書く上で取捨選択して書けなかった話が山ほどあったのです。そんな「こぼれ話」を活かせないかと思ったのが、本書を書く動機の一つです。