総額4600億円の押し売りか…日本はイージス・アショアで損をする

日ロ関係も取り返しがつかなくなる
半田 滋 プロフィール

イージス・アショアは、いわば地上配備された永続的なミサイル迎撃基地である。探知したミサイル情報はリアルタイムで米軍に提供される。米軍は日本近海に自国のイージス艦を展開することなく、いつでも米本土を狙った弾道ミサイルの情報を入手し、米軍のミサイルで対処できることになる。

仮にCECを搭載しなくても、既存の共有システムを通じて弾道ミサイル情報が米国に提供されることに変わりなく、結果的にロシアの核抑止力を低下させる。ロシアが東欧へのイージス・アショア配備で懸念した「核抑止バランスの崩壊」がアジア太平洋でも現実のものとなる。ロシアの立場になれば、反対しない方がおかしい。

7月31日の2プラス2に先立つ日ロ外相会談では、北方四島での「共同経済活動」を進展させることで一致した。ロシアは日本のカネを当てにした北方四島の経済発展に熱心に取り組むものの、領土交渉はまったく進んでいない。

ロシア軍は2016年11月に択捉、国後両島に新型地対艦ミサイルを配備し、新師団の配備も表明しており、返還交渉どころの状況ではない。

イージス・アショアの配備により、ロシアは北方四島のさらなる軍事力強化に力を入れるだろう。それは同時に、領土返還がいっそう遠のくことを意味する。「イージス・アショアは、わが国を守る防御システムだ」などと能天気なことを言っている場合ではないのだ。

 

地元は当然、反対

ここへ来て、イージス・アショアをめぐる国内の問題も鮮明になってきた。

問題のひとつは、配備予定先の住民から配備反対の声が上がりはじめたことだ。新屋演習場は秋田市街地に隣接し、住民は「攻撃対象になれば巻き込まれる」と配備反対を訴える。

むつみ演習場の場合、イージス・アショアの設置予定地と海岸との間に阿武町が挟まれ、住民は「強力なレーダー波(電磁波)をもろに浴びるのではないか」と不安を隠さない。阿武町は7月、計画撤回を求める住民の嘆願書を防衛省に提出した。

2つの候補地で同時に配備反対の声が上がったため、防衛省は8月に予定していた地質調査などの入札手続きを取りあえず、9月に延期した。

また防衛省は、人体や通信機器への影響を調べる「環境影響調査」を行うとしているが、どうやら現地で実際に行うわけではなさそうだ。

防衛省がイージス・アショアに採用するのは米ロッキード・マーチン社の「LMDDR」という開発途上にあるレーダー・システム。この未完成のレーダー機器を持ち込んでも、正確な環境影響調査はできない。

そこで防衛省は、同じ技術で米政府がアラスカ州に建設中の弾道ミサイル迎撃用レーダー「LRDR」に着目。防衛省幹部は「LRDR用に製造されたレーダーの情報をもとに、米国の協力を得ながら机上で分析する」と説明する。

実際にレーダー波を出さなくても検証できるというが、これで環境影響調査といえるのだろうか。