東京医大「女子差別」の衝撃〜国際比較でわかる日本のジェンダー問題

不祥事の一つで片付けてはいけない
畠山 勝太 プロフィール

では、なぜ男性医師は結婚や出産で医師を辞めないのに、女性医師ばかりが退職することになるのだろうか?

医師の退職理由の公的な統計がないので推測の域を出ないが、家事・育児がその大きな割合を占めていると推測される。

上の図は、OECD諸国の男女別労働時間と、無償労働時間を示している。図5を見ると、日本は女性よりも男性の労働時間の方が長く、その割合もOECD諸国の中で男性への偏りが比較的強い国の一つである。

また、男女ともに労働時間はOECD諸国のトップ(ワースト)3に入っており、長時間労働が女性の労働参加を妨げているという考え方もできる。

しかし、図6が示すように、日本の男性の労働時間が長いために男性の家事・育児・介護の時間が短いという見方もできるが、日本男女合計のこれらに割いている時間はOECD諸国で最短である上、その女性への偏り具合がOECD諸国で最悪である上に、その偏りの程度は労働時間の偏りの程度と比べても遥かに大きい。

もちろん労働時間と家事育児への時間の配分は夫婦間の交渉によって決まるものであり、制度的には男女平等であるが、ここまで歪な偏りが生じているのは慣習による壁だと考えられる。

もちろん、このような問題は日本独特のものではない。

出産・育児によって広がる男女間の賃金格差 社会はキャリアの在り方を見直す必要がある」という記事でも、家事・育児が女性に偏っており、出産・育児によって男女間の賃金格差が拡大することが、欧州や米国でも見られる現象であることは説明した。

問題はその程度である。

図5と6を比較したときに、日本の偏り具合は他国よりも大きい。

 

このように、長時間労働という社会問題が存在する中で、家事・育児は女性がするものだという慣習の問題があり、この慣習問題を回避できないがために、女医が結婚・出産を契機に退職するという問題が存在することを無視して、東京医大だけを非難するのは誤りである。

なぜ女性医師ばかりが結婚・出産によって退職してしまうのかをよく考え、日本社会の在り方が見直される必要があるのではないだろか。

もう一つ重要な制度・慣習的な問題として、司法制度にも言及しておきたい。

こちらの記事(「勤続27年、彼女が男女賃金差別で会社を訴えた理由」)で記述されているように、日本の司法制度は男女間の賃金差別の問題に対して反応が鈍い上に、米国で見られるような懲罰的損害賠償が労働とジェンダーの問題であまり見られないために、今回のような不正入試に手を染めるコストが低いという問題がある。

また、どの程度の司法制度のジェンダー問題への鈍さとどの程度の因果関係があるのかは不明だが、図7が示すように日本の女性裁判官の割合はOECD諸国でも最低に位置することは広く認識されてよい事実であろう。