東京医大「女子差別」の衝撃〜国際比較でわかる日本のジェンダー問題

不祥事の一つで片付けてはいけない
畠山 勝太 プロフィール

日本では、医師は弁護士と並んで代表的な専門職であり、給与だけでなく社会的地位も非常に高い。

そんな医師の養成機関である医学部の入試において女性差別が行われたというのは、日本の現状と照らし合わせるとあってはならないことだ。

特に、このことが女子教育に与える影響を考えるとより一層看過されてはならない問題となる。

なぜなら、女性の医師が少ないということは、女子学生のモデルケースとなる女性が少ないことを意味し、女子学生の学ぶ意欲の減退につながるからだ。

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実際に、途上国ではモチベーショントークと呼ばれる、貧しい学生たちと似た境遇にありながらも社会で成功を収めた人物による講演は子供たちの学ぶ意欲を高めると言われている。

このように、自分と似た境遇で育ったモデルケースの存在は子供達の学ぶ意欲を高めるものであるが、入試での女子差別により本来誕生するはずだった女性の医者が誕生しなかったということは、その入試で不利を受けた女性だけでなく、その女性によって学ぶ意欲が掻き立てられるはずだった女子たちの人的資本蓄積にも悪影響を及ぼしている。

 

なぜ女性医師ばかりが退職するのか

途上国のジェンダーに関する制度・慣習を分析する際に、女性が私有財産権を持っているかなどを分析する。

日本がこの項目で満点を取るのは絶対に無理だと言える。

女性国会議員の割合が、先進国どころか、世界全体で見ても極めて低いのにクオータ制度の導入が不完全であるといった分かりやすいところもあるが、選択的夫婦別姓や家事の分担を巡る議論など目立ちづらい分野もある。

前者については、制度的には妻の姓・夫の姓どちらに統一するかは自由である一方で、姓を変えることには様々な不利益が付きまとう(詳しくは、サイボウズ社長の青野氏の別姓訴訟を参照していただきたい)。

婚姻後、妻の姓になる夫婦と夫の姓になる夫婦がほぼ半々なのであれば確かに男女平等だと言えるかもしれないが、妻の姓を選択する夫婦は全婚姻の僅か4%にしか過ぎない(厚生労働省・平成28年度人口動態統計特殊報告)。

このように、制度的には男女平等であるものの、その帰結が全く男女平等になっていない事態を引き起こすのが慣習である。

読売新聞の記事によると、今回の東京医大入試における女子差別の問題は、「女子は大学卒業後、結婚や出産で医師をやめるケースが多く、男性医師が大学病院の医療を支えるという意識が学内に強い。いわば必要悪。暗黙の了解だった」から起きたということになる。