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なぜ時計の広告は、みな同じ時間を指すのか…?「10時8分」の謎

かつては「8時20分」もあった

セイコーは「10時8分」

住宅、食品パッケージ、スーパーのチラシ―。私たちの日常生活は、だれかにデザインされたものに囲まれている。当たり前の話だが、デザインに凝らされた細やかな工夫が、人々の心を無意識のうちにとらえるのだ。

広告は、まさに人の心を動かすデザインの最たるもの。モデルを起用し、キャッチコピーや角度やシチュエーションにこだわり、いかに商品を魅力的に見せるか考え抜かれた芸術品ともいえる。

広告デザインのこだわりを示す例として、腕時計を挙げよう。長針と短針がある、オーソドックスな腕時計の広告をイメージしてほしい。

じつはよく見ると、ほとんどの時計が「10時10分」付近を示していることにお気づきだろうか。

その正確な時間は各社やや異なる。たとえば日本を代表するメーカーであるセイコーの広告では、必ず「10時8分」を指している(より厳密には10時8分42秒)。これは1963年のカタログから今日に至るまで採用されている。

なぜやや半端な時間なのか? それにはいくつかの理由がある。

 

まず、ほとんどの場合、時計のブランドロゴが12時の真下にあることが理由だ。たとえば12時30分を指した場合、短針がロゴに被り、台無しになってしまう。

次に、時計は左右対称のデザインが多いが、それを際立たせるために短針と長針も左右対称に並べている。ちょうど10時10分にしてしまうと短針が少し上に動いてしまい、左右対称にならないため、10時8分42秒という秒単位の調整が入っているのだ。

また、2本の針が上を向いていると、盤面の表情が引き締まって美しく見える、という視覚的な意味も込められている。他社の広告では、かつて「8時20分」を指しているものがあった。ちょうど「10時8分」を反転させた位置にあるが、両方とも針が下を向いて「への字」を描くと「泣き顔」に見えるという意見があったという。

人が美しいと感じるデザインには、知られざる工夫があるものだ。(嶋)

『週刊現代』2018年8月18・25日合併号より

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