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年金は「夫は65歳、妻は70歳」からもらうのが一番得するワケ

ポイントは年金にかかる「税金」

42%増のはずが23%増に

定年夫婦の年金において、最も重要なのが「早く」もらうか、「遅く」もらうかだ。国民年金、厚生年金の「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」制度のことである。

制度をおさらいしていこう。下の表は、国民年金を繰り上げた場合と繰り下げた場合の受給率と受給額をまとめたものだ('18年度の老齢基礎年金の満額「77万9300円」で試算)。

年金の支給開始年齢である65歳以降、受け取り開始を1ヵ月遅らせるごとに、年金額が0.7%増える。仮に上限の70歳まで繰り下げれば、最大42%も年間受給額が増やせる。金額にして年間32万円超だ。

一方、繰り上げて受給する場合、反対に1ヵ月早めるごとに0.5%減る。最も早く60歳から受給した場合、実に受給額は30%、年間23万円以上減ってしまう。厚生年金にも同様の制度がある。

1年当たり8%もの利回り増とあって、一般的には年金はできるだけ繰り下げてもらうことが「常識」だとされている。政府も、受給を遅らせれば遅らせるほど得かのようにアナウンスしており、上限を70歳以上に延ばすことまで検討している。

 

だが、これまでの繰り上げ、繰り下げ論争で見落とされてきた落とし穴が、ここにある。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏が解説する。

「年金の受給を70歳まで繰り下げると、毎年の受取額が42%増えるという話をよく聞くと思います。しかし、それは手取りの話ではないのです。65歳以上の場合、公的年金等控除が120万円ありますが、これを超えた部分に対しては、所得税等がかかります。

さらに、それに応じて社会保険料等の負担も増える。このため、私が試算したケースでは、年金が年200万円という人が、5年繰り下げても、実際の手取り額の増加は23%程度にとどまる事例もありました。

目安として、年金の実際の手取りは、支給額の9割程度、金額が大きくなるほど差し引かれる税金も大きくなるため、8割程度に落ち込むこともあると考えたほうがいいのです」

年金にかかる税金は近年、どんどん増え続けている。かつては「老年者控除」というものがあった。65歳以上で、年間の合計所得が1000万円以下の場合、50万円の控除が受けられるというもの。

しかし、'05年に廃止。公的年金等控除も、かつては年間140万円だったが、同'05年に120万円に引き下げられた。その公的年金等控除は、今年度にさらに10万円引き下げられる予定だ。今後も徐々に負担は増え続けていくだろう。

だが、天引きのため、年金にかかる税金の存在を多くの人は自覚していない。受給を繰り下げることで、確かに受給額は増える。しかし、その分だけ、引かれる額も増える。さらに、今後税負担が増え続ければ、さらに繰り下げ受給のうまみはなくなる。