医者の間では常識だった…大調査「かかりやすい病気」は職業で決まる

認知症の危険度ナンバーワンは教師?
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では、どうやったら定年後の認知症を防げるのか。アルツハイマー病の専門家で、学習院大学理学部教授の髙島明彦氏は、認知症になりにくい職業にキャビンアテンダントを挙げ、そこにヒントがあると言う。

「キャビンアテンダントは、飛行機という限られた空間の中ではありますが、歩き回って、お客さんと会話するため、認知症になりにくい。逆に言えば、体を動かさない、座ったままの人は、認知症になりやすいのです。

体を動かさないと体全体の血のめぐりが悪くなり、脳の血流も悪くなって認知症を発症します。座ったままでも頭を使っていれば認知症にならないと思って、予防ドリルをやっている人もいますが、それだけでは意味がありません。

定年後はとにかく体を動かすこと。町内会や趣味のサークルなどに参加し、社会とのつながりを保つ。そして、ガーデニングでも散歩でもいいので、体を動かしてください」

とはいえ、猛暑だ。安易に外に出かけて長時間散歩すれば、高齢者は熱中症になる危険も伴う。

「自宅で踏み台昇降をすることをおすすめしています。歯磨きしながら、テレビを見ながら簡単にできます」(前出・内野氏)

 

定年後に怖いのは、認知症だけではない。退職後、自宅にいても何もする気が起きない――老年性うつ病にかかりやすいのは、現役時代に過度のストレスに晒された人たちだ。南魚沼市民病院の精神科医、宮永和夫氏がこう指摘する。

「現代社会では、ストレスが原因で精神科にかかるサラリーマンが増えています。その代表は企業の中間管理職です。上からはノルマ管理を厳しくされ、下からは突き上げられる。脳の細胞が破壊されて、定年後うつ病になりやすいポジションと言えるでしょう。

証券会社の株式トレーダーもストレスが過剰です。緊張を常に強いられることから、うつ病になりやすいどころか平均寿命が短いとも言われています」

それに加えて、比較的新しい職業であるIT関連の職業も老後のうつ病発症が危惧されている。

宮永氏が続ける。

「IT企業勤務も精神を蝕まれやすいですね。技術がどんどん進歩していくため、40歳を過ぎれば、現場で使い物にならなくなる人も多く、その後、悶々と過ごすことで、定年後、不調が爆発する。IT企業の社員を診ている産業医としての実感です。

システムエンジニアも同様で、現役時代はノルマに追われ、しかも睡眠時間が短い。こうした暮らしを若い頃に長く経験すると、退職後にツケが回ってきます。

テレビ局のディレクターなども、視聴率を取るプレッシャーに加えて、生活時間帯が不規則で栄養のバランスも悪い。生活を改めなければ、退職後、うつ病に限らず、高血圧や糖尿病などの生活習慣病になりやすいと言えるでしょう」

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がんによる死亡率も職業による差が明確に出ることが明らかになった。肺がん、胃がん、大腸がんで死亡した人間の職業を分析したところ、「生産工程従事者」に比べて、「サービス職業従事者」、「管理的職業従事者」、「農林漁業従事者」、「専門的・技術的職業従事者」の死亡率が高かった。

この調査に携わった北里大学医学部講師の江口尚氏が解説する。

「工場で働いている人たちは健康診断も定期的に受けるよう義務付けられていて、比較的健康管理ができていると考えられます。そういう人たちに対して、飲食店や旅館などで働いている方や、理美容師、介護職員のがんの死亡率が高い。

原因として考えられるのが、夜勤を伴う交替勤務が多いことです。工場労働者も交替勤務がありますが、事前に組まれたスケジュールに従って、規則的に勤務しています。

一方、サービス業の交替勤務は非常に不規則です。それががんによる死亡率に影響していると思われます」