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「病気ではない」という診断にガッカリする、自称・発達障害者の心理

過剰な自己責任論の末に…

なぜ「発達障害」がブームに?

香山リカ氏は、医学の臨床現場の経験を踏まえて、現下日本社会が抱えている問題を言語化する類い稀な能力がある。

著書の『「発達障害」と言いたがる人たち』では、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)など発達障害であるとの自己意識を持つ人が増えている現象について、興味深い考察を行っている。

まず、香山氏は、臨床経験から発達障害が一種のブームになりつつある状況について説明する。

〈ここ7、8年ほど、診察室に時折こう訴える人たちがやって来るようになった。多くは女性だ。

「私、発達障害なんじゃないでしょうか。たぶん注意欠陥障害(ADD)か注意欠如・多動性障害(ADHD)だと思います。あ、コミュニケーションも苦手だから、アスペルガー症候群の可能性もあるかもしれません」

最初の頃は私も、「子どものうちには見逃され、おとなになってからはっきりする発達障害も多いらしい。この人もその可能性が高いのではないか」と考えて、問診を進めていた〉

どういう人が、自分は発達障害であると訴えているのか。

 

〈「成人型のADHD」は診断ガイドラインが確立しているわけではないので、子ども時代の様子なども振り返ってもらいながら話を聴くと、学校時代はとくに問題もなかったどころか、あるいは優等生や生徒会長だったという人がほとんどだった。

では、その「片づけられない」というのがどの程度なのかと尋ねても、「もう春なのにまだ冬物のコートが出しっぱなし」「家族で食事をした食器を翌日まで洗わない」など、さほど深刻ではないことがわかる。

「書類をすぐに提出できずに溜まってしまう」といった仕事上の支障について語る人もいるが、それでも会社勤めを続けていたり、中には役職に就いていたりするところを見ると、「どちらかといえば苦手」という程度なのではないか。

診察の範囲では、この人たちにはADD、ADHD、アスペルガー症候群などと診断されるような発達の障害は感じられず、むしろ何ごとも完璧にしないと気がすまない、理想の自分でないと許せない、という完璧主義的な性格が問題であるように思われた〉