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キャッシュレス社会では「現金派」が銀行のカモになる

「手数料値上げ」はその序章

超低金利時代にもかかわらず、銀行にすべての信頼を置く人は多い。だが刻々と「ルール」は変わっている。資産を守るには、我々も変わる必要がある。

必要のないおカネを払わされる

「私はiPhoneにモバイルSuicaを入れて、常にオートチャージされるようにしています。コンビニなどでの買い物はSuicaで済ませるし、飲食店ではカードが使えない店には行きません。

現金を使うのは、1週間に1回くらいでしょうか。月で合計しても5000円くらいですから、財布にはほとんどおカネは入っていません」

こう語るのは「HONZ」代表の成毛眞氏(62歳)である。成毛氏が現金を使わない理由ははっきりしている。

「小銭が鬱陶しく、支払いも時間がかかって面倒というのもありますが、一番はポイントが貯まらないからです。現金しか使わない人は合理的な行動をしているとはいえない。現金派は、必要のないおカネを生涯で多く支払うことになります」

この成毛氏の意見には同意しかねるという人も多いだろう。やはり現金は安心だし、電子マネーやクレジットカードのポイントというのも、面倒でよくわからない。都内在住の会社員・西崎弘治氏(59歳・仮名)は現金しか使わないという。

「Tポイントカードというのだけは、コンビニでつくりましたが、よく使い方もわかりませんね。必要なときに銀行で現金をおろせばいいじゃないですか。ATMに並ぶのが面倒だという人もいますが、通帳の記帳もできるし、安心ですよ」

ことほどさように、日本人の現金信仰は根強い。第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの熊野英生氏は語る。

「日本の現金残高は102.4兆円に達し、国民ひとりあたりの現金保有額は81万円の計算になります。そのうちの4割以上はなんとタンス預金です。

'90年代の金融危機のときに増えたとはいえ、有効な資産防衛策ではない。現金は安心だという信仰、崇拝にすぎない」

だからこそ、クレジットカードや電子マネーなど、キャッシュレス決済の比率だけを見ると、'15年のデータでは韓国は89.1%、中国は60%、イギリスは54.9%、アメリカは45%。だが日本は18.4%と、主要国に比べても格段に低い。

前出の西崎氏のように、お昼時になれば銀行ATMに長蛇の列ができてしまうのは、外国人からは理解のできないことだ。

「人口が多く、資産も多い高齢者が消費の中核を担っている以上、彼らが現金決済を望むかぎりは、キャッシュレス化が進んでこなかったのです」と解説するのはエコノミスト・中原圭介氏だ。

「しかし現在、世界中の決済の現場では『現金』が蒸発しようとしています。通貨が取引の場で、どんどん使いづらくなる現象が起こっている。あと10年で『現金』は取引の場では使われなくなっていくでしょう」(同)

 

現金にこだわる高齢者を尻目に、急速な勢いで「キャッシュレス社会」が到来しようとしている。

スマホでの「LINE」アプリの決済サービス「LINE Pay(ラインペイ)」を使用している日本人が何人いるかご存知だろうか。

3250万人――。

キャンペーンなどで登録しただけの人も多いから、額面通りには受け取れない。しかし、日本で7500万人ものユーザーがいるLINEのアプリを使い、若者たちはおカネの入金、友人への送金、さらにお店での支払いまでこなしているのだ。

銀行口座番号を知らない相手でも、LINE上の「友だち」であれば無料で送金できるし、コンビニでもスマホをかざすだけで支払いができる。入金はオンラインで銀行から行うか、コンビニなどでも行えるが、いずれも手数料はかからない。