中国政府の検閲に協力?グーグルが「邪悪になるな」の理想を捨てる日

ネット史に残る大転換かもしれない
望月 優大 プロフィール

利潤追求という行動原理

ユーザーに関する膨大かつ詳細な個人データの蓄積と広告アルゴリズムへの利用や販売。プラットフォーム上でのフェイクニュースやヘイトスピーチの拡散。グローバルなスキームを用いた継続的かつ大規模な租税回避。そして、抑圧的な政府に対する迎合としての検閲の導入。

これら全ての動きは同じ一つの「行動原理」の帰結であると考えることもできるのではないか。それは、非常にシンプルで普遍的な「利潤追求」という行動原理である。

個人にひもづくデータを売れば儲かる。過激なコンテンツは沢山のPVと広告枠を生む。税金を払わずに済めば当然利益率は高まる。そして、強権的な政府に迎合しさえすればその市場が生み出す富の一部を手に入れることができる。

もし今回のリークが正しかったとすれば、グーグル内部の行動規範が屈したのは中国の国家主義に対してではなく、より一般的な資本主義の利潤追求という原理に対してであろう。

同時に、グーグル社内でもごく少数の社員にのみ共有されていたこのプロジェクトについて、グーグル内部からジ・インターセプトにリークした人物がいたということにも改めて注目しておきたい。

というのも、それがグーグル社内においてこうした動きに対する倫理的な批判が今もありうるし実際にあるということを証しているように思えるからだ。

〔PHOTO〕gettyimages

邪悪になるな?

グーグルが1998年に創業されてからすでに20年が経ち、これまでインターネット産業が自然と身にまとってきたオプティミズムや理想主義の多くはすでに失われてしまった。「Don’t Be Evil(邪悪になるな)」のオーラも今や自明ではない。

当初はあらゆる既存産業に対する「カウンター」として登場したインターネット産業であったが、現在では自動車、アパレル、金融、その他のあらゆる産業と同様に、社会からの適切なコントロールのあり方についての検討が世界中でなされている。

たとえシリコンバレーの巨人であろうとも、それらが営利企業である限り、人々の「自由」と自らの「利潤」とを天秤にかけ、後者をより重視することも当然ありえる。そのことが日々明らかになってきているからだ。

今回のグーグルによる中国市場への回帰、中国政府が課す検閲ルールの受け入れも、これまであまり意識されてこなかったそうした当然の事実の赤裸々な表現の一つとして捉えることができるのかもしれない。

 

さて、「2018年7月31日最終更新」と注記された「グーグルの行動規範」を確認すると、その末尾には以下の言葉が記されていた。

And remember… don’t be evil, and if you see something that you think isn’t right – speak up! (覚えていてほしい…。邪悪になるな。そして正しくないとあなたが考えることを目にしたときは――声をあげてほしい!)

今回のリーク記事が出たのは8月1日、その翌日のことだ。