撮影/岡村啓嗣

【特別対談】山中伸弥×横尾隆「再生医療、第二章へ」

iPS細胞を使って治す、ここまで見えた
iPS細胞研究の生みの親である山中伸弥教授と、腎臓再生技術のトップランナーである横尾隆教授。本日発売の週刊現代では、再生医療研究の先端を走る二人の研究者が「医療の未来」について熱く語り合っている。

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再生医療はいよいよ第二章へ

山中 腎臓再生にラットで初めて成功したと、昨秋発表されましたね。

横尾 再生医療という言葉さえなかった20年以上前から研究に取り組み、ようやく臨床応用が見えてきました。iPS細胞研究の生みの親である山中先生とお会いできるまで進展したことで、腎不全の患者さんたちに希望を持っていただきたいと参上しました。

山中 こちらこそ、貴重な機会をありがとうございます。

横尾 すでに、高橋政代先生(理化学研究所)たちがiPS細胞由来の網膜の細胞を移植する手術を'14年に実施しています。また、iPS細胞から作った「心筋シート」を重症心不全患者に移植する澤芳樹先生(大阪大学)の臨床研究計画も、国から大筋承認された。再生医療は第二章に入ったと感じています。

リスクを負うのは患者さん、それを忘れてはいけない

横尾 次の段階は、臓器そのものの再生になると思います。

山中 腎臓再生の研究も、今後はヒトでの臨床研究を目指すことになりますね。

横尾 倫理面や法整備の問題がありますが、10年以内、いえ、できるならば3年以内に患者さんへの応用を開始したいと思っています。国内の透析患者さんは約33万人おり、週3回、一日4時間の治療を受けています。QOL(生活の質)の低下を強いられ、辛い思いをされている患者さんを一刻も早く救いたいのです。

山中 日本は国民皆保険制度のある良い国で、多くの方が透析を受けられる。しかし、いつまでもこのままでは、ちょっと悲しい。「昔は透析していたんだよ」という時代が来てほしいんですよね。だからこそ、腎臓に限らずどこかでブレイクスルーが必要なんです。

横尾 本当にその通りです。臨床医として患者さんと話をしていると、腎臓再生への切実なニーズと期待を、日々、実感します。

山中 ただ、臨床研究のリスクを実際に負ってもらうのは患者さん。そこが医学研究の非常に難しいところです。ライト兄弟は最初に動力飛行機を飛ばしたことで知られますが、同時に初めて飛行機事故を起こした人たちでもあります。

新しいことをすると有害事象は起こり得ます。しかし、医学研究の場合、研究者や医師は社会的リスクは負っても、生命のリスクは臨床研究に参加していただく患者さんに負ってもらうことになります。

 

横尾 リスクと利益にどう兼ね合いを付けるかが、医学研究の悩ましさですね。

山中 特に日本は失敗に対して厳しい国です。iPS細胞を使った再生医療研究には、目の難病、心臓病、パーキンソン病、脊髄損傷、輸血用血小板などいろいろなアプリケーションがあり、創薬の研究も多方面で進んでいます。

原料が同じiPS細胞というだけで、コンセプトもリスクもそれぞれ違いますが、今の社会では、もしどれか一つで重大な有害事象が起これば、他の研究まで全部ストップがかかってしまいかねません。

でもだからと言って前に進まないと、50年後も100年後も医療の進歩がないということになります。ですから、いかに患者さんのリスクを最小限にするかが大切。リスクの基準は研究者だけでは決められない問題で、生命倫理の専門家やメディアなど、社会全体でコンセンサスを作っていく必要があります。