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性暴力加害者と被害者が直接顔を合わせた瞬間…一体どうなるのか

「えんたく」という試み

性暴力加害者と被害者が話す場所

性暴力は私たちの心をひどくざわつかせる。

加害者を恐れる気持ち、被害者に同情する気持ち、そしてどちらも平穏な日常生活からは遠ざけたい気持ち。

しかし、現実には、性暴力は、日常生活の中にある。

英語で「部屋の中の象」という言い回しがあるが、部屋の中に象がいて怖いし、身動きとれず、どうすればよいのか分からず、まるで象などいないかのように皆が振る舞うことを意味する。

その「部屋の中の象」を見る試みが先日大阪で行われた。性暴力の被害者と加害者、そして支援者が集う「えんたく」の開催である。

部屋の中の象

「えんたく」とは、「多様化する嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワーク(通称ATA-net)が推奨している嗜癖・嗜虐行動からの回復と回復支援のネットワーク作りを進める方法の一つだ。

ひらたく言ってしまえば、嗜癖・嗜虐行動を持つ当事者と家族・支援者そして市民などが集まって直接顔を合わせ、率直に語り、聞いて、互いの理解を促進して、回復のカギとなるつながりを作っていくことを目的としている。

嗜癖・嗜虐行動は、孤立の病と言われ、よいつながりの中で居場所と安心・安全感を持てることが回復を支えるからである。

今回の(性暴力)被害者・加害者・支援者(以後VOSと略称)えんたくは、ATA-netのうちの性問題行動を担当するユニットが実施した。

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加害者はどう生きてきたか

最初の90分間は、性被害体験のある女性3人(以後Vと略称)と性加害体験のある男性3人(以後Oと略称)が会場の中央に輪になって座り、その外側を聴いてくれる参加者たちが囲む。

まず、Vグループの進行役(FV)が、Vの一人ひとりに7~8分程度話を聞いていく。他の人たちは黙って聞く。次いで、Oグループの進行役(FO)が同様にOの一人ひとりに話を聞いていく。これを3往復行う。

「えんたく」の図
 

最初のターンで、Vの人たちは、子ども時代に近所のおじさんから、あるいは自分の父親から、成人してから、激しい身体暴力を伴う見知らぬ人から、といった性暴力被害体験を率直に語った上で、V同士が共感的に語り合える場を持てることのありがたさや、被害を受けた上に、周囲の人たちから言われた「被害者の落ち度」といった言葉に傷ついた体験を共有した。

Vの声を聞いた後で、同じ場にいるOたちが発言するにはかなりの勇気を必要としたであろう。

それでも痴漢、のぞきで複数回逮捕されたこと、逮捕されてはいないが、娘に手を出しかけたこと、女性との放逸な性関係を持っていたことを、率直に語るとともに、この場にいることが裁かれているようで怖いと正直に心情を述べたOもいた。