7月の後半、ヨーロッパは“世紀の夏”と言われる異常酷暑に見舞われていた。
ドイツ全体がすっぽりとサハラから直接流れ込んだ熱風に包まれたとかで、しかも、その熱の帯が頑として動かない。だから、スペインやフランスはもとより、ドイツも東欧も酷暑が続いた。普段なら夏でも20度を超えないスカンジナビア半島の北部でさえ、30度を記録するところが出た。とにかく暑かった。
私にとっては、すでに36度目のドイツの夏だが、年々気温は上がっている。昔のドイツは北海道と同じで、最高に暑くてもせいぜい33度。それが一夏に3日もあればいいところで、熱帯夜などありえなかった。昼間はカッと暑くても、夜は涼しくなるのがドイツの夏だったのだ。
ところが、ここ10年ほど、ありえない暑さが更新され続け、それどころか今年は38度を超える町が続出した。
しかし、ドイツの家はもちろん、ホテルでさえクーラーのないところがまだまだ多い。レストランやカフェも同様で、都会でこそ「当店は空調完備です」と張り紙がしてあるレストランを見かけるようになったが、全体で見れば、サウナのようになっている店が圧倒的多数だ。
客は皆、外に並べられたテーブルの、パラソルの下に座っており、店内はほぼ無人。ドイツ人の現実生活はこの気候の変化に追いついていっていない。
アパートの最上層階に住む私の友人は、バルコニーにベッドを作って寝ていたし、テレビでは、地下室にマットレスを敷いて夜を過ごしている人のことをレポートしていた。それどころか、大きな冷蔵室の中で、3分間3ユーロで涼ませるという、信じられないようなサービスを始めたスーパーマーケットがあるとか、警察が、普段は暴徒に放水するための放水車で公園の木に水を撒いているとか、奇妙なニュースが目白押しだった。
ちなみに、ドイツの北部、東部は大旱魃で、農作物に甚大な被害が出ている。