高速で大渋滞! 「15kmで10分差がつく」車線はこっちだ!

最新研究で解明!「渋滞学」の極意
堀川 晃菜 プロフィール

通信手段は「アリに学ぶ」?

一方で、「路車間通信」は道路に埋め込まれたセンサーや、道路上のゲートに設置したセンサーなどを介する情報共有を想定している。

センサー近くを通過する際に、“渋滞していた”という情報を残したり、受け取ったりするというものだ。

この仕組みは、アリがフェロモンを介して行列をつくることに似ている。アリは目がほとんど見えない。しかし一列になって進めるのは、「道しるべフェロモン」を頼りにしているからだ。

アリはお尻や足の裏からこのフェロモンを分泌して地面に残し、ヘンゼルとグレーテルのように後から来る者に経路を伝える。

ちなみに、この物質は揮発性が高いため、間隔(西成氏は「アリ間距離」と名付けている)が開きすぎると困るが、「アリ間距離」がアリの体長ほど詰まると、アリも渋滞する。しかし、アリは混んできても、うまく「アリ間距離」をとって、渋滞しないようにしているそうだ。

アリの行列Photo by Getty Images

現在の渋滞情報はセンターに一極集中して、そこからまた各車両に対して情報を伝える仕組みになっている。センターが「脳」という指令部ならば、車車間通信は「細胞間通信」で、路車間通信は「脊髄反射」に例えられるかもしれない。

つまり、これらの通信には脳を経由しないことで素早く反応できるようなメリットがある。情報伝達の手段を多様化させることで、さらに高度な交通システムが実現できそうだ。

データ公開で研究を加速させる

「情報シェアによる効率化を図る技術は一昨年あたりから次々と登場していて、世界中でアイデアが出されています。

フランスでは道路上を飛行するドローンを介する通信技術もあります。

車の技術が進化することで、10年後の交通体系はガラリと変わると思います。生物のように知恵を共有した『生きた交通』になっていくと思います」

その実現のためにも、ぜひ共有(オープン化)してもらいたいのが、西成氏の研究でも使用されている高速道路上の実測データだ。

全国の高速道路には「トラフィックカウンター」と呼ばれるセンサーが埋め込まれていて、5分ごとの観測で通過台数や速度を計測し、これをもとに渋滞情報が出されている。

さらにセンサーの間隔が7mであることから、2つのセンサーを同時に踏むかどうかで、大型車の走行割合も把握できる優れものだ。

西成氏は研究目的で国土交通省からデータ提供を受けているが、現段階では民間事業者には開放されていない。

データのオープン化に向けた議論が進んでいるそうだが、カーナビのメーカーや物流事業者など、有効活用したい企業も多いはずだ。

ぜひ有益な形で情報共有が進むことで、10年後の帰省・行楽シーズンに、より安全で快適な走りが実現していることを願いたい。

【参考文献】
『渋滞学』(西成活裕著、新潮社、2006年刊)

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