旅人算につるかめ算…そのリアリティのなさが気になるのは、私だけ?

覆面ドクターのないしょ話 第26回
佐々木 次郎 プロフィール

栓を抜き水を流しながら、浴槽に水を貯める!?

「旅人算」――まずネーミングからして笑える。そう、旅がテーマなのだ。読者の皆様、旅といえばどのような印象をお持ちだろうか?「世界の車窓から」みたいに世界各国を電車で旅するバックパッカーのようなイメージだろうか?

 

旅といえば「路線バスの旅」も人気を博した。蛭子能収さんと太川陽介さんのバス旅行が実に面白かった。太川さんが、おすすめ料理は海鮮丼だという情報をゲットした隣で、蛭子さんが空気を読まずに注文する。

「ぼく、カツカレー」

ところが不思議なことに、実は、算数の「旅人算」に旅人が登場することはめったになく、旅が話題になることもほとんどない。たいていは、先に出発した人を誰かが追いかけ、追いつくのにどのくらい時間がかかるかを答えさせる問題なのだ。

この旅人算でもリアリティのなさに直面する。たとえばこんな問題だ。

「お父さんが朝早く車で家を出ました。お父さんの忘れ物に気付いた息子の次郎君が1時間後にバイクでお父さんを追いかけました。次郎君は何時間後に父親に追いつくでしょう?」

これのどこが旅なのだ? 旅人はどこにいる?

さらに、リアリティーのなさを露呈するのはその答えにある。問題によっては答えが「10時間後」などという場合があるのだ。

問題が解けたりすると、喜びのあまりつい見過ごしてしまいがちだが、待ってくれ。バイクで10時間も走った次郎君ってスゴくね? 10時間耐久レースか? この息子、相当体力あるよ。口渇と空腹はいかばかりか? 私なら腰痛を発症し、病院行きかもしれない。次郎君って、まさか小学生じゃないよね? ちゃんとバイクの免許持ってるんだよね? トイレにも入らなかったところをみると、途中でちびったな?

父親のほうにも怪しい点はある。父親も車で10時間以上走っていたわけで、この父親の勤務先って一体どこなんだろう? 無駄に遠いんじゃないか? 素直にそう思う。通勤に片道10時間以上かかるということは、往復で20時間を超える。仕事をする時間もないではないか!

時速80キロで10時間走れば、東京起点で西は広島、北は青森まで行けるようです(photo by istock)

いや、待て待て。問題文に「仕事に行く」とは書かれていない。となると、この父親はもしかしたら家出したのではないのか? 追いついた息子の次郎君とのやり取りが気になって仕方がない。

「次郎、おまえに捕まるなんて、俺も焼きが回ったな」

「父さん、こんな遠くまで一人で……なぜ? なぜなんですか?」

あ~、複雑な家庭の事情がうかがわれる……。

いや、そんなことよりも、最初から携帯電話で連絡すればいいのではないか? すると答えはこうなるはずだ。

すぐに連絡がつき、お父さんは自宅に戻ってきました

最後の問題は「流水算」である。流水算とは、お風呂の浴槽に水を満たすまでに、どのくらい時間がかかるのかを答えさせる問題だ。実際の問題は次のようなものである。

「B君は浴槽に毎分2リットルで水を入れました。浴槽の容積は200 リットルです。浴槽に水を満たすのに要する時間は何分ですか?」

この流水算も一筋縄にはいかないもので、簡単な応用問題ではこうなる。

「B君は浴槽に毎分2リットルで水を入れました。同時に栓を抜き、毎分1リットルの水を流しました。浴槽に水を満たすのに要する時間は何分ですか?」

何というリアリティーのなさ! B君はまったく何をしているんだ! 誰がこんな水の貯め方をするというのだ!

現実にこんなことをしたら、次のような結末を迎えることは必定だ。

『水がもったいないでしょ!』とお母さんに叱られたのでやめました

受験生の皆さん、私みたいに疑問を持たずに、頑張って素直に問題を解いてください! 合格を祈ってます!