画/おおさわゆう

旅人算につるかめ算…そのリアリティのなさが気になるのは、私だけ?

覆面ドクターのないしょ話 第26回
医療現場で日々、患者さんを相手に診察、治療に従事する次郎先生は、性癖として、リアリティにこだわる。現実を無視した空虚な理論には我慢がならないのである。そんな先生が、子供の勉強をみてあげているときに、思わずぶちきれてしまったが、算数の問題だったんです。その理由とは……。

設問に、あまりにリアリティがないんです……。

夏といえば……塾の夏期講習です!

暑い毎日が続いております。受験生をお持ちの親御様、お疲れさまです。中学受験を控えた小学校高学年、特に5・6年生は夏期講習の真っ最中なのではありませんか?

 

受験生が家庭にいると、本当に気を遣う。模擬試験の成績が伸び悩み、ナーバスになっているわが子に接するときは、まるで腫れ物に触れるような思いだ。一方で、ちょっと目を離した隙に、ゲームをやっていたりすると「そんなことする暇があるなら勉強しろ!」と言いたくもなる。

中学受験は、高校・大学受験とはまた違った性質を持つ。子どもは小学生だ。進路・進学先を両親がある程度決めて、導いてあげなければならない。子どもの成績を巡って、子どもと両親、夫と妻の意見が衝突することもしばしば起こる。子どもは成長の過程にあり、中学受験は反抗期と重なることも少なくない。小学校高学年ともなれば、社会に不満を持ち始め、「大人なんか嫌いだ」などと言ったりする。両親の束縛が窮屈で、「俺を自由にしてくれ!」などとゴネるのもこの頃だ。さらにこの時期、子どもたちのこの言葉が、ママたちに衝撃を与える。

「クソババァ」

さて、そんな受験戦争の只中にいらっしゃる読者の皆様、小学校時代の算数を思い出していただきたい。○○算というのを勉強したことを御記憶でしょうか? つるかめ算、旅人算、植木算、流水算……

つるかめ算はその名の通り、動物のツルとカメが出てくる。問題のパターンはこんな感じだ。

「ここにツルとカメがいます。足の数は全部で60本でした。ツルとカメは合わせて25匹です。ツルとカメはそれぞれ何匹いるか答えなさい」

答えはツルが20匹、カメが5匹。

中学生ならば、連立方程式で解くことができる。ツルをx匹、カメをy匹とすれば、①2x+4y=60 ②x+y=25 この2つの式を解けばよい。

だが、小学生は方程式を使えない。小学生が方程式を理解できないことはないと思うのだが、小学校で方程式を使ってはいけないことになっている。したがって中学受験では、頭をやわらかくして問題を解かねばならないのだ。

つるかめ算は基本問題でさえ難しいのに、受験問題になるとまさに「手も足も出ない」のである。そして問題を解きながら、そのリアリティのなさに私は段々憤慨してくる。

前述の問題文を見てほしい。そもそも、こんなにたくさんのツルとカメがどうしていっしょにいるのか? 問題作成者は池や沼にツルとカメがいたと言いたいのだろう。では百歩譲って、この両者がいっしょにいたとしよう。だが、ツルとカメを数えるなら、普通最初からそれぞれ何匹いるか数えるんじゃないのか? 何で足だけ数えるんだよ!? しかもツルとカメの足の合計を数えてどーすんだよっ! ったく!

元々、中国の数学書「孫子算法」にある「雉兎同籠」(キジとウサギの数を求める方法)が、江戸時代に、おめでたい鶴と亀に置き換えられて、「つるかめ算」となったそうです(photo by istock)

つるかめ算とは要するに、足の数が異なる複数の物を提示し、計算させて頭数を答えさせるものだ。よって色々な問題のバリエーションが可能である。

イカ(足が10本)とタコ(8本)あるいは人(2本)と犬(4本)の組合せでも問題は作れる。動物でなくても良い。椅子(4本)と生徒(2本)という場合もある。

今挙げたバリエーションならリアリティはある。イカとタコは同じ海にいるし、犬は愛玩動物だから、人間といっしょに暮らしている。教室で生徒が座るのは椅子である。だからつるかめ算ではなく、「イカタコ算」などと名前を改めれば、現実味も増し、私だけでなく全国の受験生や親御さんたちの怒りも少しはおさまるかもしれない。ところが、問題のパターンはもっとあって、ひどいものではこうなる。

「ここに人とスズムシとイカがいます……」

ちょっと待て! この三者が一堂に会するのはどんなシチュエーションなんだ? 次のような場面だろうか? 私なりに考えてみた。

「みんなでキャンプに行きました。イカを丸焼きにしていると、何匹かのスズムシが寄って来て言いました。

『私たちに食べ物をください』

『君たち、スズムシ? まるでキリギリスみたいだね。イカでも食べる? タンパク質摂ったほうがいいよ』

情け深い人間たちはスズムシにイカ焼きを分けてあげました。さて、足の数は全部で90本。人、スズムシ、イカそれぞれの数を答えなさい」

こんな感じか? おいおい!

リアリティーのありそうなものといえば「植木算」だろうか? 問題形式は次の通りである。

「長さ100 mの道路の両側に5 m間隔で木を植えます。木は全部で何本必要でしょうか?」

リアリティーのない○○算ばかりの中で、この植木算は役に立ちそうな気がする。気をつけなければならないのは、道路に木を植える場合と、池のように円形の土地に木を植える場合とでは、必要な木の本数が異なるのだ。詳細は省略する(私もわからないので……)。

さて、中学受験に必要な「〇〇算」で有名なものには他に「旅人算」がある。この問題のパターンはこんな感じだ。

「A君が家を出て学校に向かいました。その後、弟が追いかけました。何分後に追いつくでしょうか?」