閲覧注意…男女の歪んだ「愛の行為」が招く、まさかの悲劇

本当にあった封印事件①
長江 俊和 プロフィール

この報道では、嫉妬深い末吉が、浮気をしたよねを折檻死させたと推測している。しかし、解剖した医師は、その説に異を唱えた。彼女の遺体に残された傷が、折檻によるものではあり得なかったからだ。一体それはどういうことなのか?

事件の4年前に知り合い、惚れ合って一緒になった二人。相思相愛で、夫婦仲はきわめてよかったという。

ところがある日、よねが知人の男性と密通していることが発覚する。末吉は手切れ金を払って別れさせたのだが、その後もよねの浮気癖は収まることはなかった。そして、その度に彼女は末吉に詫びを入れ、思う存分、責め苛んでほしいと懇願してきたというのだ。

つまり彼女には折檻願望があり、浮気をしたのは、夫に傷つけられたいからだった。彼女の傷について、末吉はこう供述している。

「よねがつけてくれって言うから、つけたものだ。嫌だと言えば、別れると言う。別れるのは困るから、言われるままにつけてやった」

 

エスカレートした「愛の行為」

実際、彼女の遺体に残された22の傷は、前と後ろに綺麗に並んでいて、陰部の六カ所の傷も、左右対称だった。嫌がっていたり、逃げだそうとしていたら、このようにきれいな傷になるはずはなかった。整然と並ぶ傷跡は、彼女が傷つけられることを、望んでいたことの証しに他ならなかったのだ。

よねの身体に、末吉の名前を刻んだのも、「他の男には、決して心を動かさないようにするため」と彼女に懇願されたからだという。焼け火鉢で、背中に文字を焼き付けたのだが、よねに「背中だと自分には見えない」と言われ、腕に書くことにした。

だが、腕を上げて書いたので、「手を下げると名前が逆になる」と言われ、今度は腕を下げて書き直したという。こうして都合3ヵ所、彼女の身体に末吉の名前が刻まれたのである。その時のよねの様子を、末吉はこう供述している。

「よねは傷つける時、一度だって痛いなんて言ったことはない。焼け火をつける時は、手拭いをかたくくわえて我慢して、熱いなんて言ったことはない。大きな灸よりも楽だと言っていた」

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よねは典型的なマゾヒストだったのだろう。そして、末吉は彼女の要求を満たすために、サディズムにのめり込んでいったのだ。肉体を傷つけたり、傷つけられたりすることで、互いの愛を確かめ合っていた二人。このように、苦痛に対し快感を覚えることを、苦痛楽症と言うらしい。こうして、よねと貞吉の「愛の行為」はどんどんエスカレートしていった。

手足の指を切断したのも、よねが切って欲しいと言ってきたからである。末吉が躊躇していると、よねがまな板の上に指をのせて、ノミを使って、自分で切ろうとする。でもなかなか切ることが出来ず、血がどくどくと流れてゆくだけだった。仕方がないので、末吉がノミを金槌で叩いて切断したのだという。

小口末吉は傷害致死罪で起訴され、懲役10年の刑が求刑された。だが、彼は刑に処されることはなかった。大正7年12月23日、判決前に末吉は脳溢血で死亡したのだ。歪んだ快楽に溺れて、あの世に旅立った二人は、その愛を全うしたのである。

※参考文献 
『新装版 戦後死刑囚列伝』村野薫(宝島SUGOI文庫)
『日本猟奇・残酷事件簿』合田一道+犯罪史研究会(扶桑社文庫)