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石原さとみは、日本の女子の生きづらさを映す「鏡」である

その役柄はこんなにも変わってきた

現在、日本テレビの『高嶺の花』に出演している石原さとみ。石原と言えば、多くの男性から「理想の女性」と評され、女性からも「憧れの存在」とみなされる日本を代表する女優だ。

振り返れば、これまで石原は、看護師、刑事、医師といった様々な職業、そして、ドジっ子、奔放な妹キャラ、誰をも魅了する女などなど、いろいろなキャラクターを演じてきた。

本稿では、石原が演じてきた役柄を振り返る。なぜか。石原がドラマのなかで演じたキャラクターや、職場での立ち位置、上司や同僚からの扱われ方の変化は、日本社会における「女性の立場」の変遷に、ピッタリと寄り添っているように私の目には映るからだ。いわば、彼女の役柄は、日本の女子の「鏡」となっている。

大きなことを言ってしまえば、石原の役柄の変化を詳しく見ることで、日本社会における女性像の変化をたどることができるのだ。

 

石原さとみは、第三形態まで変化する

石原の役は「第一形態」、「第二形態」、「第三形態」に分けられる。簡単にまとめておけば、第一形態は、「明るく健気で、まわりから愛される女の子」、第二形態は「仕事も女性としての魅力も備えたパーフェクトウーマンであることを求められる存在」、第三形態は、「性別に関わりなく能力を最大限発揮し、間違ったことを言われたとき、自尊心を傷つけられたときに反論できる女性」という具合だ。

第一形態から順に見ていこう。

石原が連ドラで初めて社会人を演じたのが、2006年の『Ns'あおい』である。石原演じるヒロイン・美空あおいは、もともとは総合病院の救命救急センターの看護師だったが、ある事件をキッカケに、「再就職処分所」と言われる、いわくつきの病院に異動を命じられてしまう。

基本的にあおいは、正確に仕事をこなす優秀なキャラクターだ。しかし、作中では、健気、元気、まっすぐ、明るい、という性質がより強調して描かれる。当初は意地悪に見えた先輩ナースが、あおいの明るく健気で正義感に満ちた姿にふれて、態度をあらためるというシーンもある。

しかし、第一形態の頃の特徴として、「男性との関係」においては、こうした健気さや明るさが都合よく利用されてしまうことが多い。どういうことか。

病院の男性医師たちは、当たり前のようにあおいにコーヒーを淹れることを頼み、また別の医師はあいさつがわりにお尻をさわり、レントゲン技師は「肌綺麗だな、内臓も綺麗だろう」と言うなど、ごく自然に、現在であれば「一発アウト」な言動をとる。また患者たちは、「看護師さんは心の手当てもしてくれる優しい女性じゃないと」と、当然のように彼女に感情労働を求める。

もちろん、これらが批判的に表現されているのならいいが、そうではない。あおいは、一瞬怒ったり不満を口にしたりするものの、空気が険悪にならない程度の、ギリギリのラインを保った反応をする。男性に都合のいい、女性の「スルー力」が求められていた時代性がうかがえる。

言い換えれば、「明るく健気」という長所は、ハラスメントに対しても発揮されて当然だという雰囲気がある。女の子は細かいことに目くじらを立てるものではない、職場の空気をそんなことで乱すべきではないという時代だったのだ。

本作は、法を犯してでも人命を救うべきか否かといったテーマを取り扱っていて見どころの多い作品だったが、ジェンダー観に関しては、12年前の感覚をそのまま切り取っている作品であった。