“おもしろい外見”=“かわいい”という価値観

病気の動物のために通院や介護が必要になったら……。飼う前に覚悟をしていても、時間のやりくりや金銭面など、ケアが長期間に渡るほど途方にくれる人も多い。動物を迎え入れた途端にケアが必要となると、飼い主への負担も大きくなる。せっかく動物と一緒に暮らすのなら、互いにとって幸福な時間を過ごせるのが理想だ。

もちろん、予期せぬ病や事故もある。が、人間が近親交配を繰り返し、無理やり作り上げた品種で、互いが不幸になるのはとても悲しいことだ。猫も犬も、原種と離れた特徴を持つ品種は遺伝性疾患が多い。長い年月守られてきた品種ならば疾患は少ないが、歴史の浅い品種は血が濃いため、動物にとってもつらい疾患を発生させやすいのだ。

日本では、とにかく外見が変わった品種が人気を集める。歴史が浅い品種を好む傾向が強い。スコティッシュフォールドだけでなく、やはり突然変異で生まれた足が短い猫を繁殖した“マンチカン”も人気ランキングで3位に入っている。また、SNSで、鼻ぺちゃで呼吸が苦しい短頭種の犬や猫のユニークな写真の投稿も多い。見た目がおもしろい、かわいい、インスタ映えするという人間の願望によって、苦痛を味わう動物が作り出されているのだ。

足の短いように繁殖した「マンチカン」Photo by iStock

“ブームを止めること”が残酷な繁殖も止める

実は、このスコティッシュフォールドの遺伝による軟骨異常の問題は、愛猫家たちの間では以前から話題になっていた。しかし、今もスコティッシュフォールドは、ペットショップで販売され、繁殖もされている。遺伝的に不利で繁殖しないほうがよい品種でも、“買う人がいる限り”は繁殖され、苦しむ猫はどんどん生まれてしまう

最近問題になっている、ブリーダーが飼育放棄するブリーダー崩壊の現場でも、スコティッシュフォールドを保護するケースは多い。人気品種だからとブリーダーを始めたものの、奇形が多く出て、販売できず放棄するという最悪なケースも発生しているのだ。

まずは、こういった実態を知って、自分がどう行動するか、どうしてペットと暮らしたいのかをペットショップに行く前にきちんと考えてみてほしいと思う。もちろん、スコティッシュフォールドには罪はない。彼らの特性を理解して、大事に育てている人もいる。その人たちを批判するつもりはない。が、ブームになることで、不幸な猫を増やしていることは確かだ。

“見た目”でなくても信頼感は生まれる

スコティッシュフォールドが持つ特性を今まで知らなかった人の中には、ショックを受けている方もいるかもしれない。でも、手放すという選択は絶対にしないでほしい。他の猫種と比較すると注意が必要だが、十分なケアをすれば、快適な猫生を送ることはできるのだ。

注意点としては、大きく5つある。

①まずは苦痛がないかよく観察をする

②最低でも年に1~2回は獣医師の診察を受ける

③太らせないよう体重管理に気をつける

④猫が上る場所へ何らかのステップをつける

⑤床に敷物をしいて柔らかくする

などが日常行いやすいケアだ。

運悪く発症してしまった場合は、グルコサミンなどのサプリメントを飲ませたり、消炎鎮痛剤の処方を受けペインコントロールを行うなどのケアが必要だ。そして症状が重い場合には、二次診療施設における外科手術や放射線治療による緩和ケアなど特殊な治療も必要になるかもしれない。また、軟骨の問題の他に、尿路系の疾患や心臓の問題なども、他の猫種と比較すると注意が必要なので気をつけてみてあげてほしい。

このスコティッシュフォールドを生み出した問題を突き詰めて考えると、人間が“自分たちの楽しみのために生き物を飼うこと”自体に疑問が生じてしまう。人間の楽しみのために選ばれる猫の陰で、毎日多くの猫が税金を使って殺処分されている。自分の楽しみだけで選択することに疑問を感じた人は、“保護猫”を迎えることも検討してみてほしいと思う。その選択が、ひとつの猫の命を救うことにも繋がるのだ。

我が家では、品種はもちろん、性別も毛色も性質も選べない状態で保護した猫がいる。でもそれは猫側にしても同じで、飼い主の顔も年収も性格も選べないまま我が家にやってきた。猫側に不満もあったかもしれないが、一緒に暮らすうちに、今ではお互いにかけがえのない存在だ。“見た目”を尺度にしなくても、動物との信頼関係は、必ず生まれる。そのことを多くの人にもっと知ってほしいと願うばかりだ。