# 中国経済

衝撃! 中国ではなぜ、「配達ドライバー」が続々と死んでいるのか

4億3000万人の巨大市場の「闇」
姫田 小夏 プロフィール

もうひとつの「大量ゴミ問題」

スマホアプリのおかげで、中国人の生活は格段に便利になった。中でも“フードデリバリー”は2016年を前後して爆発的にユーザーを増やし、その結果、「配達員」という新たな雇用を創出した。しかしその一方で、多くのひずみを生んだのは前述したとおりだ。

雨にも負けず……【Photo】Gettyimages

もうひとつ注目したいのが、中国のフードデリバリーがもたらす環境問題だ。筆者の上海の友人・鵬さん(仮名)は、こんなことをつぶやいていた。

「2016年ぐらいからアプリを使って出前を取るようになった。あまりに便利なので、会社の昼食を含めて一日二食をデリバリーで済ませることも増えたけれど、届いたポリ袋の中から出てくるのは、使い捨てのプラスチック容器と割りばしとストロー。食後はゴミとなるその量に、最近は罪悪すら覚える……」

冒頭で、中国では3億4300万人がフードデリバリーを利用していると書いた。仮に彼らが1日1回デリバリーを注文すれば、3億4300万本の割り箸が、3億4300万個の容器が、3億4300万枚ものポリエチレン袋が消費される計算になる。

こうした環境負荷を問題視する声は、中国でもポツポツと出てくるようになった。ある中国のネットユーザーは「このポリ袋の平均使用時間はたった25分だが、地中に埋めても土に返るのに470年かかる」と訴えていた。

 

90年代、中国の都市部では発砲容器のポイ捨てが問題となり、中国は先進国から「白色汚染」というレッテルを貼られた苦い経験がある。上海ではゴミの分別や削減が呼びかけられ、2010年の万博開催を前に、食品スーパーを中心にレジ袋が有料化された。そして、「環境」をテーマにした上海万博で、地元居住者は「環境負荷」に対して高い意識を抱くようになった経緯がある。

上海に約20年在住する日本人女性はこう語る。

「昨今のデリバリーサービスの隆盛で、せっかくの環境に対する取り組みも後戻り。レジ袋有料に不便を感じながらも、“環境のために”と頑張ってきたあの努力は何だったのか」

トイレで調理…競争に勝つためなら何でもアリ

話を配達員に戻せば、「そこまでやるか」という泥沼の戦いに至った背景には、熾烈な企業間競争がある。競争といっても独特なのは、中国の場合、競争相手を徹底的に滅ぼし、最後は1強または2強が市場を独占してしまう結果にある。

振り返れば、タクシーの配車アプリもそうだった。最後は「滴滴」が「快的」を呑み込み、市場は「滴滴」の「1強」になってしまった。フードデリバリー業界も同じで、もともと多くの企業が参入していたが、いつの間にか、「餓了嗎」が「百度外売」を飲み込み、「美団」とともに市場を二分するようになった。

今年5月、タクシーアプリの「滴滴」がこのフードデリバリー業界に参入を始めたが、「滴滴」がこの業界を丸呑みしてしまうことだってあり得る。今なお「配達員」を筆頭に、日夜命がけの戦いが繰り広げられているのもそのためだ。

ここでは紙幅を割かなかったが、食品の衛生問題だってある。

中国のネットメディア『人民網』は、広東省の某デリバリー専用飲食店が「調理スペースが足りずトイレ内でも調理を行っていた」と暴いた。「競争に打ち勝つためなら何でもアリ」というわけだ。

これから本格化する日本のフードデリバリー産業には、ぜひとも健全な発展を期待したいものである。