# 中国経済

衝撃! 中国ではなぜ、「配達ドライバー」が続々と死んでいるのか

4億3000万人の巨大市場の「闇」
姫田 小夏 プロフィール

8円の歩合のために、肋骨9本を折る

「規定の時間内に届けよ」という指示があることも、彼らを「命がけ」にさせている。「時間内」を達成できなければ、逆に「失点」として賃金を引かれてしまうことになるからだ。

そのためだろう、上海ではマンションのエントランスで守衛と揉める風景をよく見かける。「第三者の侵入を防ぐ」という目的で立たされている守衛は、配達員に「待った」をかける。先を急ぐ配達員は守衛の尋問にいちいち答えていられないので、猛攻ダッシュでの“関所突破”を試みるが、結果、複数の守衛に抑え込まれ、配達は「タイムオーバー」になってしまう。

路上では交通整備係のおじさんと配達員、そして警官が三つ巴となった大乱闘すらある。上海に限らず中国の路上は、デリバリーの二輪車による違法駐車が問題になっており、これを苦々しく思っている交通整備係と、「そんなことは構っていられない」とする配達員が激しく衝突するのだ。最後は警察も巻き込んでの殴り合いとなる。

 

飲食デリバリーのみならず、ネット通販の普及でも「配達員」が重宝されているが、こちらも同じように「時間との闘い」だ。その厳しい労働環境は「死と背中合わせ」といっても過言ではない。

昨年、山東省でネット商品の宅配員が「肋骨9本」を折る大けがをしたというニュースが報じられた。原因は、宅配予定時間のたった「5分の遅れ」に怒った注文客による暴行だった。6分の遅れなら命を失ったかもしれない。凶暴な客もいるものだ。

ちなみに、肋骨9本を折られたこの商品宅配員は、この配達でもらえる歩合はいくらだったのか、という記者の質問に「100個の配達で50元程度(約850円)」だと答えている。つまり、1個の配達でもらえるのはたった5毛(約8.5円)だということだ。中国の都市部ならコミッションももう少しもらえるだろうが、たかだか8円のために肋骨をへし折られてはかなわない。

とにかく彼らは急いでいる。最近は「客の家の台所で調理を始める配達員」すら出現した。材料だけ鷲掴みにし客の家に向かった配達員は、台所で自ら調理を始めたという。

中国では「何が配達員をコックにしたのか」というタイトルでこの話題が報じられた。その背景にあるのも「一分一秒の戦い」。この配達員は、客先への瞬時の到着とアプリでの「評価」に頭がいっぱいで、「厨房での調理の時間がじれったくて、待っていられなかった」と語ったというから、まさに本末転倒だ。