AKBが開いたパンドラの箱『PRODUCE 48』の代償と可能性

残酷すぎる光景から考えること
松谷 創一郎 プロフィール

松井珠理奈と宮脇咲良

こうして続いた最初のパフォーマンスで、48グループの多くは酷評され続けたが、NMB48の白間美瑠(B)やAKB48の高橋朱里と小嶋真子、岩立沙穂(各B)など、上位にランクされる者もいた。

なかでももっとも高く評価をされたのは、自身でジャズアレンジした「ダンシング・ヒーロー」を歌った竹内美宥(AKB48)だった。

その歌唱力が評価されてAランクとなった彼女は、過去7回参加したAKB選抜総選挙ですべて「圏外(101位以下)」だ。つまり人気がない。日本ではくすぶっていた実力が、場所を変えて認められたことになる。

こうした日本勢の挑戦のハイライトは、やはり48グループ上位の人気である松井珠理奈と宮脇咲良だった。

先に登場したのは松井のほうだった。

彼女が選んだのは、板野友美のソロ曲「Dear J」。満面の笑顔で登場し、ひとりで堂々とパフォーマンスをした。その振る舞いは、非常に凛然としていた。トレーナーのひとりは、「これまでの日本の練習生ではもっともダンスが上手かった」と評してもいた。

だが、結果はBランク。

松井は笑顔でステージで去ったが、Aには入らなかったのだ。先の話をすれば、松井はこの番組ではずっとその存在感を発揮しきれないままとなる。エピソード3以降は目立たなくなり、結果的に番組途中で降板する。

7月に体調不良で休養することが発表されたが、その原因のひとつは間違いなくこの番組だろう。

ライバルや後輩に、実力基準でどんどん追い抜かれていく。さらにデビュー前の韓国練習生に圧倒的な実力を見せつけられる。自分の弱さをけっして見せようとしない彼女のプライドは、おそらくボロボロになったはずだ。

そんな松井に対し、高く評価されたのが宮脇咲良だ。松井のパフォーマンスをステージ裏で観ていた彼女は、かなり緊張した表情をうかべていた。

番組では、当初から宮脇に強くフォーカスをあてていた。それまでの48グループのメンバーの誰よりも扱う時間は長く、登場も松井の後だ。

本人のモチベーションも非常に高いものがあった。自身満々の松井に対し、宮脇は実力のなさを吐露していた。事前に収録されたインタビューでは、こう話している。

「HKT48で7年活動してきて、実力はあまりないほうじゃないかと思って。ずっと疑問で不安でいっぱいで。実力があまり身につかずに、時間が流れていくのがすごく悔しくて」

 

番組プロデューサーのハン・ソンスから「総選挙も上位なのに、今回のチャレンジにはリスクもあるのでは?」と質問されると、「そこまでなれたのは、自分の実力だったのか、日本だからそうなれたのか」「この番組を通して、自分の人生を変えるきっかけになればいいと思っています」と答えている。謙虚というよりも、貪欲な姿勢がうかがえる。

この一連の宮脇の発言は、もともとK-POPを好む彼女だからこそ生ずる48グループに対する疑問でもある。加えて、多くの48メンバーが目の前で酷評されるのを見て、「韓国のみなさんは日本に来ても通用するのに、日本人は日本を出た瞬間に通用しなくなるのが、すごく現実を突きつけられた気がして悔しい」ともこぼす。

そんな彼女は、AKB48の「黒い天使」をひとりで披露した。

トレーナーの評価はやや分かれた。イ・ホンギなどはBとしたが、結果はAランク。なかでも、ふだんは厳しいペ・ユンジョンが「私は、あなたが1位候補だという理由がわかりました」と述べたのが印象的だった。

この評価には、多くの異論が出たのもたしかだ。Aランクの韓国側の練習生は「彼女がAなのはわからない」と述べ、韓国の視聴者からも多くの疑問の声が出た。

ただ、宮脇と松井で明確に差がついたのはたしかだ。日本でファンからの人気投票(AKB総選挙)では松井の後塵を拝した宮脇が、実力主義の韓国では逆転の評価をされた。

さらにそれを踏まえた(韓国の)視聴者の第1回目の投票でも、トップに立ったのは宮脇咲良であり、松井珠理奈は4位となった。後にこの差はさらに開き、その明暗がはっきりと分かれていく──。