AKBが開いたパンドラの箱『PRODUCE 48』の代償と可能性

残酷すぎる光景から考えること
松谷 創一郎 プロフィール

『PRODUCE 48』〜K-POPへの挑戦

しかし最近、こうした状況に大きな変化が生じつつある。

48グループのメンバーが、韓国でK-POPにチャレンジしているからだ。高校野球の選手たちが、プロ野球に挑んでいるような状況だ。

その姿が観られるのは韓国のケーブルテレビ局・M-NETの『PRODUCE 48』というリアリティ番組だ(毎週金曜日・6月15日~8月31日予定・全12回/日本でも放送中)。毎回2時間半ほどの番組には、秋元康も日本側のプロデューサーとして正式に協力している。

その内容は、日韓96人の若い女性たちが、2年半だけ活動する12人グループのメンバーを目指して競い合うというもの。結果は、「国民プロデューサー」と呼ばれる視聴者の投票によって決まる。このサバイバルにAKBやSKEなどのメンバー36人が参加している。

この『PRODUCE 48』には、『PRODUCE 101』という前身がある。シーズン1からはI.O.Iというガールズグループを、シーズン2からは現在も活動しているWanna Oneというボーイズグループを生み出し、ともに大ヒットした。

こうした前例を踏まえると、『PRODUCE 48』から生まれる新ユニットの成功もなかば約束されており、活動期間も長いためにそれまで以上の大ヒットの可能性がある。もちろん、日本での活動も視野に入れているはずだ。

48グループは、すでに活動しているインドネシア・ジャカルタをはじめ、今年はタイやベトナムなどへの進出が予定されている(中国にはいちど進出するものの失敗し、今年再度チャレンジする予定だ)。

そうしたアジア進出のなかでもっともハードルが高いのは、十分な実力と人気のあるK-POPがあふれる韓国だ。今回の企画はM-NET側から持ちかけられたようだが、秋元は渡りに船だと見なしたのかもしれない。

だが、蓋を開けてみるとなかなか複雑な様相を呈している。果たしてこの番組は、48グループの韓国進出の足がかりになるのか、それともK-POPに飲み込まれるのか、あるいは新たな融和の道に進むのか──。

 

日本勢の惨敗…?

番組は、まず96人の参加者(全員「練習生」と呼ばれる)がそれぞれパフォーマンスを披露し、能力別にランク分け(A~D、Fの5段階)されるところから始まる。同じ事務所のメンバー複数でやる者が多いが、ひとりでやる者もいる。

この審査は、レベル別にトレーニングをするためでもあり、同時に番組開始時に公開されるミュージックビデオ「Pick Me」のポジションを決めるためでもある。

ランクは、彼女たちを鍛え上げるトレーナーたちによって決められる。そのメンバーはFTISLANDのイ・ホンギや元SISTARのソユ、ラッパーのチーター、そして数々のヒット曲を担当した振付師たちなど、全員K-POP界の面々だ。

韓国側から参加している練習生57人のうち、デビュー済みなのはAfterSchoolのイ・カウンや、新人グループ・fromis_9のチャン・ギュリなど3名のみ。他の54人はすべて各事務所が抱えている練習生だ。つまり、プロ野球に喩えれば2軍選手や育成選手ばかり。

一方48グループからは、39人が参加している。内訳は、AKBが19人、HKTが10人、NMBが6人、NGTとSKEが各ふたりだ。

このなかには、先日のAKB総選挙で1位に輝いた松井珠理奈(SKE48)や3位の宮脇咲良(HKT48)、9位の矢吹奈子(AKB48)、10位の田中美久(HKT48)、12位の高橋朱里(AKB48)などがいる。

48グループでも人気上位のメンバーが多く参加しているが、総選挙で圏外だった者も約3分の1にあたる12人もいる。高校野球で言えば、強豪校から中堅校まで万遍なく参加しているという印象だ。