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日本に10万人以上いる「発達性読み書き障害」の子どもたち

急に成績が落ち、進学が困難にも…
日本でも発達障害という言葉が広く知られるようになってきた。自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)が大きな注目を集める一方で、ほとんど診断や対応がされない障害もある。

今回、小児科専門医で発達障害に関する多数の著書を持つ平岩幹男氏が、「発達性読み書き障害(ディスレクシア)」を抱える子どもたちの実態と障害の乗り越え方をお伝えする。

健太くんの場合

健太くん(仮名)は現在小学校2年生です。生まれる時にも生まれてからも特に問題なく過ごしてきましたし運動や話し言葉の発達にも問題はありませんでした。

あとから振り返ってみると幼稚園の時に文字や数字には興味を示さなかったそうですが、会話や生活習慣には問題なく、通常学級で小学校生活がスタートしました。

ゴールデンウィークが終わって教科書を使った授業が始まりました。

文字の音読から教科書の文章の音読へと一気に進んでいきますが、健太くんは教科書が読めませんでした。算数では計算問題は何とかなっていましたが簡単な文章題はやはり解くことができませんでした。

読めないままで2学期に入り、テストはほぼ0点でしたが、友だちとは楽しく遊んでいましたし、週に1回のスイミングスクールにも元気に通っていました。

 

2学期が終わろうとするある日、お母さんが担任に呼ばれました。

「テストの点が低いのは知的な能力の遅れがあると考えられます。このままのクラスで出来ない学習をするよりももっと配慮できる学級に移ることをお勧めします」と言われてしまい、結局2年生からは特別支援学級に在籍することになりました。

2年生の5月、健太くんとお母さんは私の外来にやってきました。

少し小柄な笑顔のとても可愛いお子さんで、食べ物やスポーツなどの話題にも自分の意見をしっかりと言っていました。

算数も「2足す9は?」と聞いたら「11」と答えていました。これで知的障害? この時にはもう読みの苦手さがあるだろうということは見当が付いていました。

そこでひらがなカード「き」と「さ」、「あ」と「ゆ」を出して一瞬見せてなんだったと聞くとちょっと考えてから「き」と出てきたり「あ」を出したのに「ゆ」と答えたり、すなわち瞬時に正確に読めていないことがわかりました。

ひらがなカードの例 http://rabbit.ciao.jp/hiragana.pdf

そこで1日5分のカードを使った読み取り訓練を始めました。

2ヵ月くらいで読みはかなり正確になり、夏休みには読めるようになった次の段階として音をまとまりとして読む「い」「ぬ」とバラバラではなく「いぬ」とまとまりで読む練習に入りました。

3学期には教科書の音読もできるようになり、3年生からは通常学級へと戻りました。まだまだトレーニングは続きますが──。