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高齢ドライバー問題、家族はこんなふうに向き合ってはいけない

免許返納を促す方法

「80代の父親が以前にも増して怒りっぽくなり、話すと喧嘩になるので避けてしまう」

「90歳を過ぎた祖父がますます頑固になり、自分が絶対だと思い込んでいる。家族の話にまったく耳を貸さず悲しい」――。

高齢の家族と同居する子供や孫世代から、こんな悩みを打ち明けられることがある。

著作や講演で老親と子供との関わりについて論じてきた筆者の元には、各種メディアから「親の免許返納を促すには」といったテーマでの取材依頼が次々と寄せられている。

高齢ドライバーの免許返納について論じられるとき、公共交通機関が未整備な地域に暮らす高齢者の問題や、認知機能が低下している高齢者の把握とその対応などが論点となることが多い。しかし筆者は、これまで高齢者ドライバーの事故の問題とあまり関連づけて論じられてこなかった、「加齢によるパーソナリティ(人格)の変化」も要因のひとつではないかと感じている。

高齢になるとパーソナリティに変化が生じることは一般的に起こりうることで、頑固さが増し他者の言うことを受け入れない、物事に慎重になるといった変化のほかに、「自分に病気があるのではないか」と気にしすぎるなどの心気的傾向が現れやすい、内向的となり閉じこもりやすくなるなどの例もある。本稿では、この点から高齢ドライバーの問題を論じてみたい。

 

セクハラも前頭葉の老化現象

長年にわたり高齢者の臨床に携わってきた精神科医の和田秀樹氏は自らの著書でこう語っている。

「脳の老化というと一般的には、記憶力が低下し物忘れが多くなるというイメージがあるかもしれないが、脳の記憶を司る部分(「海馬」と呼ばれる部位)が真っ先に萎縮するわけではない。じつは、どこよりも先に理性や感情を司る前頭葉の機能低下がスタートする」(『困った老人と上手につきあう方法』和田秀樹著・宝島社新書より)

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和田氏によると、前頭葉の老化は早い人で40代、50代くらいからはじまり、60代、70代になると確実に機能が低下するという。

さらに、前頭葉の機能が衰えはじめたときに起きることとして、以下の4点を挙げる。

①意欲の低下

②感情抑制機能の低下(理性の低下)

③ 判断力の低下

④性格の先鋭化

②の感情抑制機能の低下とは、さまざまな欲求を我慢する、相手の気持ちを慮るというコントロールが出来なくなることだ。④の性格の先鋭化は、その人の元来もっている性格がより顕著になって出現することを指す。

昨今、市長、村長、町長といった自治体の首長のセクシャルハラスメント問題が明るみになっている。高齢になってセクハラ行為に及ぶのは、前頭葉機能の衰え、つまり老化現象である可能性も否定できない。

首長によるセクハラでとくに筆者の印象に残ったのが、岩手県岩泉町の元町長である伊達勝美氏のケースだ。70代の伊達氏は岩手日報社の女性記者が宿泊していたホテルを訪ね、無理やり抱きつくなどの行為に及んだとされる。伊達市は記者会見で「『助けて』という幻聴に襲われて、ドアをノックしたら(女性が)出てきて、ああよかったと思わずハグをした」という主旨の釈明をしていた。