お答えしましょう、「宇宙の果て」

……現代科学の可能な限り
戸谷 友則 プロフィール

宇宙の外は「根の国」

なお、日本の文献でも日本書紀にすでに「宇宙」が登場する。

こちらは、イザナキ・イザナミがスサノオに「お前のような道を外れたものは宇宙を治めることはできないから根の国(死者の霊が行く地下の世界)へ行ってしまえ」と言った、という使われ方である。

つまり、根の国は宇宙ではないわけだ。講演会で「宇宙の外には何があるのですか」というやっかいな質問を受けることがあるが、「根の国です」と答えても良さそうである。

かつて地下深くの死後の世界が「宇宙の外」だった Photo by Getty Images

さて現代では、「宇宙の果て」と言っても様々な意味で使われているようである。多くの人がまず考えるのは、「宇宙空間はどこまで拡がっているのか」という意味であろう。

だが、宇宙は時空の拡がりであるという相対性理論の考えからすると、過去と将来がどこまで拡がるのかもまた、「宇宙の果て」であろう。

一方で、宇宙は誕生してから138億年しか(!)たっておらず、我々が光で観測できる宇宙の領域にも限りがある。この「観測可能な宇宙の果て」という意味で使われることも多いようである。

ここで「138億年しか」という書き方をしたのには理由がある。実は現在の宇宙は、時間軸方向に比べれば空間軸方向への拡がりの方が圧倒的であることがわかっているのだ。

そして、「人類が認識する世界が宇宙である」と、やや哲学的な考えに立てば、電磁波、ニュートリノ、重力波といった様々な観測手段で宇宙の謎を解明しようとしている科学の最前線もまた、一つの「宇宙の果て」と言えるのではないだろうか。

その挑戦は、筆者が専門とする天文学・宇宙物理学や、原子核・素粒子物理学など多岐にわたる分野で行われている。その最新の状況や、最前線の雰囲気も本書で感じ取ってもらいたい。

本書ではこうした様々な「宇宙の果て」について、現在の到達点や理解度をまとめてみた。

なるべく予備知識なしでも読んで頂けるものを目指し、宇宙論の基礎である相対性理論の基礎的な説明から始めている。ビッグバン宇宙論の基礎や、それに基づく宇宙史の概略もまとめ、宇宙論に初めて接する人にも入門書となるよう心がけた。中学生ぐらいの知識で十分読めるものになっている(と、少なくとも筆者は考えている)。

本書が、あなたにとっての「宇宙の果て」に対する答えとまではならなくとも、何らかのヒントぐらいになればと願っている。

読書人の雑誌『本』(2018年8月号)より

宇宙の「果て」に何があるのか
最新天文学が描く、時間と空間の終わり』

宇宙の果てに何があるのか

戸谷 友則 著

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