イルカはしゃべるし、モノマネもする!

言葉を覚えたシロイルカの「超」能力
村山 司 プロフィール

人の声をモノマネするナック

2014年、「イルカがしゃべった」という話題が、毎日新聞の1面に載り、話題になりました。

ヒトが発した言葉を摸倣してナックが出す音が、まるでヒトの言葉をしゃべっているように聞こえるのです。イルカはもともと模倣が得意なうえ、前述のようにシロイルカという種類はさまざまな鳴音を発するので、ヒトの言葉もマネできたというわけです。

  子どもの呼びかけに応えたり、モノマネしたり。芸達者なナックの姿は、鴨川シーワールドのマリンシアター〈ベルーガ・パフォーマンス〉で観覧できる。現在は水槽がリニューアルされ、さらに臨場感が増している

実際に、ナックの模倣した音について、周波数や持続時間などを解析した結果、ナックの音のパターンがヒトのそれとよく似ていて、ナックがヒトの言葉をマネしようとしていたことが科学的に証明されました。

  ヒトの声と、ナックがマネをした音の周波数パターン。似ている!


ちなみに、アメリカ海軍でもかつて、シロイルカがヒトの言葉をマネしたという報告がありますが、ナックと違って単語レベルではありません。また、シャチでもヒトの言葉を摸倣した例があります。

これからの「ナック」——動詞を教えたい!

さて、こうして名詞を覚えたナックですが、それだけではまだ、私たちヒトと話すことはできません。次は動詞です。もし動詞が習得できれば、名詞と動詞を組み合わせて文を作ることができます。

筆者は現在、どの動詞をどのように教えるかを模索した実験をしています。

その要点は、「動作が記号で表出される」ということを理解させることにあります。一つの動作が特定の記号で表されることがわかれば、ナックは他の動詞も同様に理解していくことができると考えられ、ナックの「語彙」がどんどん増えていくことにつながるからです。

また、記号の意味を理解すれば、自分で記号を選ぶことによって、先のハーマンの研究では実現できなかった、イルカが自発的に文を作るという可能性も考えられます。

模倣については、現時点では単にヒトの言葉をマネしているだけで、その意味を理解しているわけではありません。そこで今、その意味を理解させるための研究を行っています。

【写真】シロイルカたちが言葉を話せるようになるのはいつか
  ナックたちシロイルカが、自分から言葉を発する日が待ち遠しい!

ナックがもし、模倣している言葉の意味を理解できれば、将来的にはヒトの言葉でナックの言語理解を検証できるかもしれません。その成果を、前述の記号を用いた言葉の研究と融合すれば、さらに言語研究は進むことになります。

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海に還った哺乳類 イルカのふしぎ

【書影】海に還った哺乳類 イルカのふしぎ

5500万年前、彼らは突然、海へと戻っていった──。かつて陸上で暮らしたイルカの祖先は、なぜ海中生活に舞い戻ったのか? 海が進化させた独自のからだと「水中生物最大の脳」の秘密とは? 乳母や保母に育てられる“女系社会”の掟や、「鳴き声」を名刺代わりに使う知性に驚嘆する──。

「ヒトと会話ができ、文字が読めるイルカ」を目指して探究してきた第一人者が語る、最新イルカ学のすべて。