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黒い看護師を完落ちさせた伝説の「割り屋刑事」驚きの実力

あだ名は「ハマの金八先生」

低い声の人情派

「神奈川県警は、事件発覚当初から久保木愛弓(31歳)をマークしていました。今回の事件で、被害者らの体内から検出されたのが殺菌消毒剤の『ヂアミトール』。

その消毒剤の成分が、彼女の看護服のポケットの裏側から検出されたことが決め手になったと言われています。

しかし、その物証は事件発覚の少し後には、すでに捜査当局も掴むんでいた。しかも、久保木は事件があった病棟で働いていたわけですから、『いつ付着したかわからない』とシラを切られてしまう可能性もあったんです」(全国紙記者)

7月7日、神奈川県警の神奈川署特別捜査本部が、殺人容疑で久保木を逮捕したのはご存じのとおり。一時は迷宮入りかと思われた事件を解決に導いたとはいえ、舞台裏では、神奈川県警がギリギリの状況で捜査を進めていた。前出・記者が続ける。

「事件後も当局は関係者の聴取やDNA鑑定などを続けていましたが、結局は、久保木が犯行を認めなければ、水の泡になるような危うい状況だった。

さらに、神奈川県警は8月に幹部の異動を控えており、なんとしても7月中にカタをつけたかった。絶対に失敗するわけにはいかない。そんななか、白羽の矢が立ったのが、Sさんだったのです」

S氏とは、神奈川署に籍を置く50歳前後のベテラン男性刑事のこと。取り調べで被疑者を落とすことに長けた捜査員、いわゆる〝割り屋〟と呼ばれる存在である。

ずんぐりむっくりの体型で、肌は少し浅黒い。顔も、目や鼻などのパーツが大きく、見た目は映画評論家の故・水野晴郎に似ているという。

 

そんなS氏がいかにして「黒い看護師」を落としたのか。その前に、ざっと事件の経緯を振り返っておこう。

'16年9月20日、横浜市の大口病院(現・横浜はじめ病院)で、入院していた88歳の男性が死亡した。あまりに容態が急変した末でのことだったため、司法解剖を行ったところ、殺菌消毒剤『ヂアミトール』の成分が検出された。

その2日前に亡くなっていた別の88歳の入院患者の遺体からも同様の成分が出てきた。

捜査の結果、'16年7月~9月の約3ヵ月の間に大口病院で48人もの入院患者が次々と不審死していたことが発覚したのだ。

事件発覚直後から、県警が「最有力候補」と見ていたのが、久保木だった。彼女は事件後、何度もメディアから直撃取材を受けている。

だが、頑なに犯行を否認。大口病院を辞めた後も、'17年2月から神奈川県内にある介護施設で働き、高齢者の相手をしていた。

介護施設で働く久保木が、また同様の事件を起こしたら――。そんな恐怖を抱えながら、捜査当局は彼女の行動確認を続けるしかなかった。