「やりたいことだけやれる会社」は本当に最高の職場ですか

「成長できる環境」がわかる2つの問い
吉田 行宏 プロフィール

苦手なことはムダなのか?

ここで今回のテーマ、「やりたいことだけやれる会社は最高の職場か」について、改めて考えてみたい。人によってタイプに違いがあることを考慮すると「やりたいことがやれる」環境の捉え方も変わってくる。その点を踏まえながらタイプごとに考えてみよう。

A:挑戦者タイプ
目標が高く、その達成のためには、苦手なことにも積極的に取り組めるチャレンジャータイプにとっても、「やりたいことだけやれる」環境は居心地がいいだろう。
しかし、このタイプの人は、自分のやりたいことができることよりもいかに目標を達成するかのほうの優先順位が高いと考える。
したがって、現状やりたいことをしているだけで、目標もクリアできる環境であればそれに越したことはないが、その2つが両立しないのであれば、今の心地良い環境、少し緩い環境から、厳しいが自分をさらに成長させ、目標に近づける環境を選択することが、挑戦者らしい選択と言えるのではないだろうか。

B1:願望倒れタイプ
このタイプの人は、各タイプの説明部分でも書いたが、目標と現状のギャップによるブレーキやストレスを抱えている。このブレーキとストレスを減らすためには大きく3つの選択肢が考えられる。
(1) 徐々に苦手許容度を上げてAタイプを目指す
(2) 目標や願望を下げてDタイプで暮らす
(3) B2の匠タイプになる
である。どれを選ぶかは、本人次第であるが、(1)のAタイプには若干の「覚悟」が必要になる。また、(3)のB2タイプは、寝食を忘れられるような「こだわり」を自分の内なるところから発見しなければならない。

B2:匠タイプ
好きなことでとことん自己研鑽に励む匠タイプの人にとっては、「やりたいことだけやれる」会社や仕事ほど、理想的な場所はないと思う。自分が「ここだ」と納得できる場所を見つけたら、全力でその道を突き進むのがいいだろう。
ただし、1つだけ注意が必要な点がある。このゾーンでの頑張りは時として経済的に報われないことがある。昔に比べれば、好きなことを極めることがお金になる世の中になってはいるが、プロスポーツでも競技により年棒格差があるように、その分野を極めることが収入と比例するとは限らないことを承知した上で、その道を選択するべきだろう。

 

C:広域環境適応タイプ
どんな環境でもある程度頑張れる力を持っているCタイプであっても、「やりたいことだけやれる環境」は好ましいものだと言えるだろう。したがって、この環境を継続することにまったく問題はない。
しかし、Aタイプほど高い目標とは言わないが、自分がイメージできる達成目標より、少しだけ高い目標を持つことで、自分の能力や人生の可能性をさらに高めることができるだろう。そのことも、ぜひ選択肢に入れて考えてみてほしい。

D:限定環境適応タイプ
このタイプは環境に対する好き嫌いや、得意不得意がはっきりしているために、自分が心地良いと思う環境にめぐりあえる確率は高くない。したがって、もし「やりたいことだけやらせてもらえる」環境に遭遇したら手放すべきではないし、本人も当然そうするだろう。
ただ、少しずつでも苦手なことを克服するよう心掛けることが、自身の成長につながる可能性はある。無理をしすぎてしんどくなるのは本末転倒だが、自分のペースで挑戦してみてはどうだろうか。
また、今だけではなく、中長期的に家族や子供の将来等のことまでイメージした視点も持つことで、目標や苦手許容度が変化することもあるので検討してみるといいと思う。

最後にまとめると、やりたいことだけやれる環境は、どのタイプの人にとっても、もちろん悪いものではない。苦手なことや苦労だけを「石の上にも3年」的な思考で我慢しなさいと言うつもりもない。しかし、人としてのさらなる成長を考えた時、苦手なことや、その苦労は、自分の器を大きくしてくれるものかどうかを見極める視点も重要だと思う。

今回は紙面の関係で「成長とは」「成長するためには」について触れることができなかったが、拙著「成長マインドセット」に詳しく書かせていただいたので参考にしていただきたい。

どのタイプの皆さんも、この機会に自分の生き方、仕事との向き合い方、そして自分にとっての成長をもう一度検証してみてはいかがだろうか。

「成長とは何か?」 「悩みを減らし成長するためには?」 驚くほどシンプルな「成長」の原理原則 がわかる、体感型書籍!