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米国エリートが経済政策で「トランプ派」に転向した重大な理由

日本の難しい局面はまだ続く

ドイツの主張で回避された「米欧衝突」

7月25日夕(米国東部時間)、ドナルド・トランプ米大統領と欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会のジャン=クロード・ユンカー委員長はホワイトハウスで会談後、ローズガーデンで共同記者会見を行った。

そしてトランプ、ユンカー両首脳は、米国とEU双方が自動車を除く工業製品の関税撤廃を目指す交渉を行うことで合意したと表明した。米国とEUの全面衝突は回避されたのだ。

ユンカー氏と並ぶトランプ氏。合意は得たが、笑顔は見られないようだ(Photo by GettyImages)ユンカー氏と並ぶトランプ氏。合意は得たが、笑顔は見られないようだ(Photo by GettyImages)

EUの対米輸出額は3758億ユーロ(約49兆円)、対米輸入額が2568億ユーロ(約33兆円)で、米国の対EU貿易赤字は年間1000億ユーロ超(約13兆円)に達している。

トランプ大統領は2日前の23日、「EUとの協議が不調に終われば、我々はEUから入ってくる何百万もの自動車に関し、何らかの対応をせざるを得ない」と述べ、現行の輸入自動車関税2.5%を20%に上乗せすることを示唆していた。

一方のユンカー委員長は訪米に先立ち、米国が関税率引き上げを断行すれば報復措置を取らざるを得なくなると指摘したうえで、EUが輸入する自動車に課す現行10%関税の撤廃(トラックは除外)の可能性について言及していた。

「自動車で譲れば次は農産物が標的となる」とするマクロン仏大統領はユンカー委員長に対米譲歩反対の意向を伝えたが、メルケル独首相の強い要請を容れたユンカー委員長がトランプ大統領に米国産大豆や液化天然ガス(LNG)の対EU輸出拡大など譲歩案を示し、ドイツが最も恐れる自動車への追加関税の当面の棚上げを獲得したのである。

 

トランプ大統領には譲れない理由がある。先にフィンランドの首都ヘルシンキでプーチン露大統領と会談したが、米メディアがこぞって「トランプはプーチンにしてやられた」と報道しただけでなく、米議会は共和、民主党を問わずトランプ大統領の対露融和発言を無定見と批判している。

要は、国内でのミラー特別検査官が主導する「ロシアゲート」捜査が佳境を迎えるなか、トランプ氏が乾坤一擲放った米露首脳会談は失敗の烙印を押されたということである。

トランプ氏にとって唯一の朗報は、「反米」とされるロペスオブラドール次期メキシコ大統領から、大統領就任まで6カ月あるが、その前のNAFTA(北米自由貿易協定)締結の非公式打診があったことだ。ところがカナダとは、トランプ大統領がトルドー首相、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表はフリーランド外相と最悪の関係にある。米加関係は修復不能に陥っている。