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日銀が市場との「柔軟な対話」を始めた理由

異次元緩和、正常化か

日銀が金融政策正常化に向けてのコミュニケーションを始めた。7月20日の東京時間の取引終了後、「日銀が金融政策の柔軟化を検討」とのヘッドラインが流れた。それをきっかけに、「想定よりも早く、異次元金融緩和の正常化が進むのではないか」と考える市場参加者が増えた。週明け以降、それを反映し、わが国の10年国債の流通利回りは上昇基調だ。

日銀は、市場との対話を通して、金利のあるべき水準を探ろうとしている。目的は、国債買い入れ額を漸次的に減らすことと、金融機関の収益を支えることだ。

今後、日銀は決定会合の声明文や各種レポートに、金融政策の副作用の問題などをにじませていくだろう。今すぐ金融政策の枠組みが変わるとは考えづらいが、わが国の金融政策が重要な局面を迎えていることは確かだ。

 

限界に直面する日銀の金融政策

2016年9月を境に、日銀の金融政策は大きく変化した。それ以前の政策は“サプライズ重視型”と言える。2014年10月末の追加金融緩和、2016年1月のマイナス金利導入は、市場参加者の予想しなかった決定だった。つまり、黒田日銀総裁は、予想外の金融緩和を実施することで、名目金利の引き下げを狙ったと考えられる。背景には、デフレ脱却には強力な金融緩和が必要という、同総裁の強い信念があった。

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しかし、この政策運営は市場参加者からの不評を買った。特に、マイナス金利政策は、40年金利などの急低下を招き、金融機関の収益力を悪化させた。それは保険商品の予定利率の引き下げ、銀行預金の利息の更なる減少を通して、社会心理にも無視できない影響を与えた。2016年9月、日銀は追加の金融緩和でデフレ脱却を目指す考えを改め、金融政策の“持続性”を重視したスタンスに移行した。

ただし、異次元の金融緩和は永久に続けられる政策ではない。わが国の債券市場は、日銀の管理相場と化している。その状況が続けば、市場参加者は低金利環境の継続を楽観するだろう。超長期の国債の流通利回りには低下圧力がかかり、長短金利差の縮小が進みやすい。それは、金融機関の収益をさらに圧迫する恐れがある。

また、日銀は年間80兆円をめどに国債を買い入れることができなくなっている。理由は、新発国債の発行額が減少しているからだ。これをステルス・テーパリング(中央銀行が政策の変更を正式に表明しないうちに、徐々に国債買い入れ額が減少すること)という。政策の内容を現実に則させるためにも、日銀はこれまでの政策をファインチューニング(微調整)すべき時を迎えている。

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