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ビートたけしが語る「志ん生は、ここがすごかった」

現代が負ける落語家
芸人としてトップを走り続け、映画界では「世界のキタノ」となり、近年は小説で文学界にも殴り込みをかける異能の人ビートたけしが、「かなわない芸人」として敬愛しつづける落語家がいる。

古今亭志ん生(5代目)である。

そんな志ん生について、たけし独自の分析を行った落語論にして究極の芸人論、『やっぱ志ん生だな!』より、たけしが「芸人」としての志ん生の凄みを解説したパートを特別公開。

誰もかなわない

志ん生さんについては、オイラも晩年しか直接は知らないわけだけど、ずっと仰ぎ見ていた人たちにとってはもう圧倒的だったんだと思うよ。あの談志さんだって、「古今亭にはかなわねえ」って言っていたぐらいだから。

だから、志ん生さんは間違いなくスターでもあるんだけど、時代状況があってのものではないのがまた、すごいんだ。

 

野球で言うと、王・長嶋の時代って、ゴールデンタイムに毎日、野球中継をやっていたからこそ、国民的スターになりえた部分もあるわけだ。いまだとメジャーリーグでいくら活躍したって、中継は朝早くだったり、そもそも専門チャンネルでしか放送されていないことだって多い。

でも、じゃあ野球の技術は?といえば、それはイチローのほうが明らかに王、長嶋より上だろう。

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これはたいていのジャンルにも言えることだけど、スポーツはとくにそう。

いま体操でトップを張ってる内村航平の技術と、1964年の東京オリンピックの遠藤幸雄の技術の違いは、大学生と小学生ぐらいの差があるよね。いまの技術から見れば、遠藤の技なんて鉄棒を握ってぐるぐる回ってるだけだもの。それでも金メダルなんだから、いかに体操技術が進歩したかってことだ。

ところが、落語においては、過去と比較して現代が負けるんだよね。

志ん生よりうまい落語家がその後いるか?といえば、いないわけだから。オイラはそう思うよ。