セイコー工場での加工工程 Photo by Getty Images

部品バラバラ、超小型モーター…時計の歴史を変えた「仰天の工夫」

日本の発明が「世界的革命」を起こした

50年前の技術者の挑戦

世界のスタンダードを変えることは大変なことです。

パソコンのスタンダードを築いたマイクロソフト、テレビの使い方を変えた液晶など色々な存在がその「大変なこと」をなしとげてきましたが、世界の時計の潮流に革命を起こしたのは、日本の技術だったという事実をご存知でしょうか。

近年、世界の時計の主流となっているクオーツウオッチ(腕時計)は、電池から供給される電力を使って水晶振動子を振動させ、それによって得られる正確な振動数を時間の信号源にして、時計の精度をコントロールしています。従来の機械式時計よりも30~100倍も高い精度を得ることができます。

据え置き型の「クオーツクロック」は、1950年代後半からつくられていましたが、当時の大きさは大型の冷蔵庫ほどもあったのです。

腕時計にするためには、体積を1万分の1に縮小する必要がありました。また、電池で作動させるための省エネ化など、乗り越えなければならない壁が山積していました。

【画像】放送局用水晶時計
  放送用推奨時計(写真提供:セイコーミュージアム

この困難を見事に解決し、針式のアナログ式クオーツウオッチの基本技術を開発したのが日本の諏訪精工舎(現・セイコーエプソン)で、世界で初めて商品化したのが服部時計店(現・セイコーウオッチ)だったのです。1969年のことでした。

そして、このとき諏訪精工舎が開発した「ある技術」が、世界で生産されるほぼすべてのアナログ式クオーツウオッチで、現在も使われているのです。

厚い壁だった変換機構

クオーツを腕時計化する上で、特にネックとなっていた技術的ポイントは、少なくとも3点ありました。

一つ目は1.5ボルトの低電力で高振動をつくり出す「水晶発振機構」、二つ目は取り出した正確な高い振動を扱いやすい単位にまで正確に落とす「分周回路」、そして三つ目は分周回路から生み出される電気の信号を針の動きに変える「変換機構」です。

なかでも、製品化にあたり、最後まで開発者たちの頭を悩ませたのが「変換機構」でした。

クオーツ時計以前に使われていたウオッチの「変換機構」は、ガンギとテンプを用いた機械式が主流です。しかし、この方式はクオーツの高振動に対応できないことや、部品同士の接触が摩耗を引き起こし機能の劣化につながる欠点がありました。

【画像】機械式時計の構造機械式時計の構造
左側にある「テンプ」の往復運動の周期が「がんぎ車」の運動を制御し、秒針の動きをコントロールしている(『時計の科学』より)

したがって、クオーツの高精度を生かし、長期間にわたって変わらない性能を発揮するには、部品同士が直接接触しないモーター方式が採用されました。