「カレー」と「オンラインサロン」と「スポーツ留学」の共通点

“コミュニティ”とは何か【前編】
田丸 尚稔 プロフィール

本書は発売前からコンテンツの一部がSNSなどオンラインやコミュニティ内でも公開され(これまでであれば、発売前にコンテンツを公開することなどネガティブ以外のなにものでもないやり方だった)、完成後も一般的な流通システムを利用しつつも、それこそコミュニティで拡散、販売されることにもなり、制作の事象を観察することが、コミュニティが社会でどのように機能するかも示しているという、二重にも三重にも興味深いものがあった。

より細かく知りたい方は、ぜひ本書を購入することを勧めつつ、ここからはコミュニティが今の時代にとって必須であることを前提に話を進めたい。

 

コミュニティは重要であることは疑いようがない。しかし、かといって、すべてのコミュニティがうまく回るわけではい。では、何が重要な要素になるのか。私が特に考えるポイントは以下の3つになる。

1、多様性の容認
2、プレーヤーになること
3、自分事としての物語

このアイデアをカレーとオンラインサロンとスポーツ留学、てんでバラバラのテーマから紐解いていきたい。

「カレーの学校」は生徒が主役になる

「東京カリ〜番長」という集団をご存知だろうか? 

私も数年前からメンバーになっているのだが(カレーを作ることができないという致命的なスペックにもかかわらず“アメリカ主任”という謎の役割で受け入れられる寛容な集団なのだが、この寛容さこそがコミュニティには欠かせない要素であることは後述する)、東京を拠点に“カレー”を軸として約20年間、さまざまな活動を行ってきた。音楽フェスやDJイベントでカレーを振る舞ったり、カレーのレシピを雑誌で連載したり書籍化したり、企業とのコラボでカレー菓子を開発したりと、カレーに関するあらゆることを行ってきた。

「(東京カリ〜番長が行ってきたイベントでは)画家でもミュージシャンでも、それから特に肩書きがない人でも“何か面白いことをしたい”という、漠然とした気持ちを抱えた人どうしが集まって、そして繋がっていたと思います」

そう話すのは、カレーの活動を牽引してきた中心メンバーで、現在は「カレー将軍」というグループや個人として活躍する水野仁輔だ。最近の活動で特に注目したいのは2017年から「ほぼ日」と組んで立ち上げた「カレーの学校」。

2週に一度開催される授業は合計で6コマを履修することになるのだが、毎回90分の講義形式のレクチャーに加え、ゼミと称した60分のグループワークが行われる。講義は水野が教師となり、カレーにまつわるあれこれを学ぶ機会になるが、ゼミはグループがやりたりこと、気になるテーマを探求する。

これまで誕生したゼミには「スパイスを畑で育てるゼミ」、「カツカレー探求ゼミ」、「付け合わせ研究ゼミ」、「カレーとお酒の相性を探るゼミ」などさまざまで、水野は各テーブルを回り議論に参加するものの、主役はあくまで参加者だ。

「(参加している期間の)後半になると、生徒同士のコミュニケーションがどんどん活発になっていくから、先生である僕が取り残される感覚にすらなる。次の授業までの2週間で生徒同士がやりとりしたり会ったりして、どんどん仲良くなっていく。そうなると、僕の授業よりも、むしろコミュニティとしての場を求めていることを強く感じます(笑)」(水野)

しかし、参加者の自主性を促すことは結果論ではなく、「カレーの学校」を立ち上げる時から主眼に置いていたことでもある。水野は授業の最初に、参加者に必ずこのようなことを話しているという。

「美味しいカレーを作ること、あるいは食べることを目的にしないでください。カレーはあくまで手段です。その先にこそ、本当に面白いことがあります。そこまで考えて、動くことができる“プレーヤー”になってほしい。美味しいカレーを作ることができるようになりたいだけなら、料理教室に行ってください」

なるほど、だからゼミの活動が重要というわけだ。

講師がいて、生徒がいる。その形式は、さまざまなジャンルの教室や有識者によるトークイベントなど同様のものがたくさん存在しているが、それらは「カレーの学校」とは似て非なるものだと考える。

たとえばイベント内で質疑応答のコーナーを設けてコミュニケーションを双方向にすることがあっても、あくまで講師と生徒という主従が発生する関係性の範疇にとどまる。また、そのテーマに携われるのはイベントが開催される時間と場所に限定されてしまうのも大きな違いだ。