あなたのスマホのフリーズ、原因は降りそそぐ「宇宙線」かもしれない

スマート社会を脅かす「ソフトエラー」

まさにこの事態が懸念されているのが自動運転システムである。周囲の状況や車体の状態を常に把握するためのセンサー群やコンピュータにはどの程度ソフトエラー対策を施せば良いのか、世界中で議論されている最中だ。

さらに、自動運転システムに限らずあらゆるデバイスで用いられる半導体は「より小さく、より低電圧」で動くよう開発が進められている。小さく低電圧で動く半導体ほど核反応による小さな電流でもデータが乱されてしまうため、ソフトエラー対策の重要性も高まってくる。

世界中の半導体が微細化し低電圧で動くようになり、数が増え続ける現代。身の回りのデバイスにどの程度のソフトエラー対策を施せばいいのだろうか?

40年前から報告されていたが…

ソフトエラーの際に半導体の中では何が起きているのか、少し詳しく見てみよう。

半導体の中では電圧の高低で0, 1を表現し、データを保管している。1と0の情報を保管するチップのシリコン原子核へ高いエネルギーを持つ中性子が衝突すると、小さな確率で原子核反応が起きる。

反応の末にプラスの電気量を持った原子核の破片が生み出され、チップ内を動き回る。その結果生じた電荷がチップ内の情報が保存されている領域に集まると、1と0が裏返ってしまうのだ。

ソフトエラーの概念図

こういった誤動作は1970年代から報告されており、70年代末にはIntelがメカニズムを明らかにしている。

約40年前に発見されたリスクであり研究の蓄積があるものの、これまでの研究は主に航空宇宙分野を対象にしたものだった。

大気に守られた地上とは異なり、宇宙空間には大量の宇宙線が飛び交っている。ロケットや宇宙船はもちろん、高高度を飛ぶ飛行機に積まれた半導体をどのように守るか、ということに焦点が当てられており、地上のソフトエラーリスクはあまり対象とされてこなかったのだ。

ソフトエラーの発生頻度は

半導体自体の微細化や低電圧化に加え流通する数の爆発的な増加が予想されるにもかかわらず、十分な対策が取られているとは言えないソフトエラー。

実際にどの程度起きているのか、日立で約1000個の半導体を並べ実験した結果がある。

30日間観察し、検出できたソフトエラーが11件。スマートフォンでも同じ頻度でエラーが起きると仮定すると、1日当たり昨年出荷されたスマートフォン約15億台のうち50万台以上にエラーが発生していることになる。

もちろん、日立の実験で用いた半導体とスマートフォンで使われているものではエラーの起きやすさは異なる。加えて、ソフトエラーのすべてが画面のフリーズのように人が気づく誤動作を起こすわけでもない。

しかし、自動運転システムに限らずIoTデバイスなど半導体が組み込まれた製品の流通量増加が予想される将来、無視できないリスクとなるのではなかろうか。