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「発達障害」の妻に家計を任せたら、危うく破産しそうになった

凸凹夫婦の家庭改革メソッド【9】

現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』。おかげさまで売れ行き好調ではあるのですが、「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載待望の第9回です。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/series/daisukesuzuki

あればあるだけ使っちゃう

仕事の打ち合わせなどで都心に出ることがあると、僕にくっついてくることが多いお妻様。この同行スタイルは、かつて僕が社会的困窮者をターゲットにした重すぎる取材を続けていた頃に、取材が終わった後のメンタル崩壊状態の僕を彼女が支えていた頃からの名残だけど、待ち合わせ場所に向かう僕との別れ際に、彼女は毎度財布の中からシールを出して、僕に提示する。

円谷特撮の「ウルトラQ」の名物キャラクター『カネゴン』がお金ちょうだいと語りかけるステッカー。「あんま無駄遣いはしないでね」と5千円程を渡すと、お妻様は満面の笑みでたったかとお買い物に駆けていく。

お妻様の必須アイテム・カネゴンシール(写真:著者提供)

お妻様、もう40歳までカウントダウン中。人形の服作りやバイク競技の計測員などの不定期な収入以外に定職のない彼女の財布の中に福沢諭吉が入っているのを、もう何年も見たことがない。

「ちょっと君、出先でなにかあったらどうしようとか思わないの?」

と聞けば、

「あればあるだけ使っちゃうの自分でも分かってるから、これでいいの」

最近ではついに財布を持ち歩くことすらやめてしまい、こうして出かけるたびに毎度カネゴンステッカーが提示されるわけなのだが……。

 

浮世離れした彼女の金銭・経済感覚とのズレは、同棲を始めた20年近く前から続いてきた。つき合い始めの頃、まだ定期収入があったころの彼女は、まさに本人が自覚している通り「あるだけ使う」で、稼いだ金を全てを買い物に費やす日々。

ああ忘れられない。同棲を始めた部屋にとんでもない勢いで増えていった、僕にはいまいち価値が理解できない大量のアイテム。買うだけ買って開封もされずに天袋に押し込まれるプラモやらフィギュアやら、聞きもしない限定版CDやらDVDボックスやら、大量の漫画やら年2回補充される薄い本やら。

まあそれは彼女自身の稼ぎだから問題なかったし、同棲はあくまで共同生活という主張の僕は、きちんと彼女に家賃や光熱費の一部を入れてもらっていた。

だが問題は、彼女が勤めていた会社を解雇されて無職になった後のことだ。当時の僕は今のように「男が外で働くなら女が家計を運営する。とかいう役割の決めつけは糞だ」とは思っていなかったから、彼女に給料を預けて家計を任そうと試み、案の定我が家のお財布事情は惨劇館になった。

1ヵ月の固定費でどれだけの支出があるのかは概ね伝えてある。だが彼女に財布を預けて食料品や生活雑貨類などの調達をお願いすると、彼女がスーパーで手に取るのは「自分の目に入った」(注意を引いた)商品。同類の商品と比較検討などということはせず、僕が買ったこともないような国産ブランド肉とかがレジを通る。

「ねえ俺、こんないいとこの麺つゆとか、買ったことないよ。これいくらしたの?」

「わからん」

「この肉は?」

「わからん」

そう。彼女には商品を「値段と質のバランスで検討」して選ぶという習慣がなく、そういうものなのだと教えても、一度気に入った商品の利点のみに思考が集中すると、値段に対する注意は飛んでしまう。そしてレジを通して、初めて商品の値段を知るという体たらくなだったのだ。そんなこんなで、月の半ばで買い物に行かなくなる彼女。

「なんで買い物行かないの?」

「お金なくなったし」

「j;dlkじゃいおうg@09う(声にならないSAKEVI)!!!! てか貴様、どうしてそうなった。まだ今月あと1週間あるのに!!」

「そうなっちゃったんだからしかたない。自分でもわからないよ」

「……せめて先月の領収証類とか見て固定費を省いて、1日に使って良い額を単純に割り出せば良かったんじゃない?」

「いい、だったらお金使わなければいいだけだから」

駄目だ。彼女に任せてたら我が家は破産する! ということで、結局彼女に家計を預ける試みは、あっけなく破綻したのであった。

そんなことがあってからもう15年以上が経つが、その後から近年に至るまで、僕のお困りごとは単に日々のお買い物で我が家の財布をお妻様に任せられないことだけではない。

財布を預けられないということは、家計運営を預けられないということ。家計運営とは、毎月の収支の把握と残高の推移から「緊縮か通常か」の舵取りをしたり、光熱通信費や自動車税や住民税、国民健康保険税などの税金の支払い手続きや、自動車の任意保険や火災保険、そして賃貸の更新やら、転居時の膨大な変更手続きなどの事務作業も含むものだと思う。

ところが彼女はその一切に対して、僕に一任だったのだ。

 

ポストに届いた税務関係の封筒が、僕の机にポイっと置かれる日々。

「ねえ、大事な封筒なんだからそんなところに置かないでよ」

「大事かどうか、あたしにはわかんないもん」

「他人事かよ!? 家庭の税金は一緒に暮らしてる君の税金でもあるんだよ?」

「払ってるの大ちゃんじゃん」

「~~~~~!!!」(心のSAKEVI)

その重要通知書類の上に、捨ててもいいチラシ類なんぞ積まれた日には、結構立派に血圧が上がったものである。

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