寿司食べ放題から洋服貸し出しまで「定額制ビジネス」が花盛りなワケ

自動車の「乗り放題」実現も遠くない
加谷 珪一 プロフィール

一方、寿司とは逆に、カフェの原価はかなり安い。提供するコーヒーの価格にもよるが、10%から20%程度の原価で済んでいるケースが多いはずだ。

これだけ聞くとカフェはボロ儲けと思ってしまうかもしれないがそうではない。カフェで提供されるコーヒーの単価は300円から1000円程度とかなり安い。1杯ごとの利益率が高くても、たくさん提供できないと売上高の絶対値を稼ぐことは難しい。つまりカフェの場合には、回転寿司とは別の理由で顧客の回転数を上げたいと考えているのだ。

月額固定料金で何十杯も飲まれてしまった場合、確かに利益率は低くなるが、売上高と利益の絶対値は増える。このあたりの微妙な関係によって定額制が維持可能なのかが決まってくる。

 

流行の背景にあるのは?

今後、定額制のサービスは増えることはあっても減ることはないと筆者は考えている。社会が成熟化してくると、単純なモノやサービスへの欲求は減少してくるというのがその理由である。

毎日、使うモノでなければ、手元になくてもよいと考える人は着実に増えているし、日本の場合、実質賃金が低下していることから、高額の支出を控えたいとの意識も強く働いているだろう。一方で、成熟社会においては、気に入ったモノやサービスとは、じっくり付き合いたいというニーズも強い。

カフェの定額制やスポティファイに代表されるような音楽配信サービスは、こうしたニーズをうまく捉えたものといってよいだろう。

スーツのように必ず支出しなければならないもので、クリーニングなどメンテナンスが面倒な商品は、レンタルにしてしまった方が、コスト・パフォーマンスが高くなる。また、ZOZOTOWNが自動採寸サービスを本格的にスタートするなど、アパレル業界にはIT化の波も押し寄せている。

ITを駆使すれば、自分に似合う洋服を事業者がAI(人工知能)を使って選び出すなどのサービスを実現できるが、こうした新サービスと月額固定料金制の親和性は高い。毎月、決まった料金を払えば、自分に似合う洋服がシーズンごとに自動的に送られてくるのなら、これほど便利なサービスはないはずだ。

定額制ビジネスの究極的な姿はやはり自家用車だろう。

自動運転システムが普及すれば、理論上、1台のクルマを複数人でシェアしつつ、限りなく、自分専用に使うというサービスが現実のものとなる(利用時間帯、利用場所、頻度などから重複する確率が低い顧客をうまくグルーピングするのは、ITの得意技である)。

先ほど、定額制サービスは、うまく利用すればコスト・パフォーマンスが高いと述べたが、クルマでも同じことがいえる。月額数万円程度で、限りなく乗り放題に近い利用ができるサービスが登場すれば、多くの人がこれに飛び付くはずだ。こうした画期的なサービスが登場してくるのは、時間の問題だろう。