米中貿易戦争が日本のマンション市場に与える「悪夢のような影響」

「局地バブル」は崩壊寸前!
榊 淳司 プロフィール

バブル崩壊のシグナル

ここで気になるのが、バブル崩壊のシグナルだ。

「平成大バブル」は事実上1991年頃には終わっていたが、それを世の中の多くの人々に鮮明に印象付けるまで、1997年の山一證券や北海道拓殖銀行の破綻を待たねばならず、わかりづらかった。これに対し、「ファンドバブル」はわかりやすく、2008年9月のリーマン・ブラザーズの倒産に端を発していた。

翻って今回の「局地バブル」はどうか。私はそのシグナルが、この米中貿易戦争か、もしくは中国の経済クライシスになると見ている。

まず、米中の貿易戦争でどちらが有利かという議論の前に、それ自体が世界経済にとってはマイナスであることは、G20で不安視する声が相次いでいたように、はっきりしている。

そうしたなか、日本経済は米中二国の経済と深く関わっている。「日本は漁夫の利を得る」という考えもあるようだが、ミクロ的な視点はいざ知らず、マクロ的に見ればマイナスであることは間違いない。

バブルというのは好景気を背景に、実態を大きく上回って膨らんでいく(景気が悪い時にバブルは起きない)。そして、不況になれば当然、弾けるものだ。

世界経済が失速する中で、日本だけが好調を維持するとは考えられない。したがって、米中の貿易戦争は中長期的に見れば、いまの「局地バブル」を崩壊させる原因に十分なりえる。ただし、景気減速によるバブル崩壊は「一気に」というよりも、「平成大バブル」のように、「徐々に」という動きになるだろう。

一気に崩壊する「悪夢」のシナリオ

これに対し、米中の貿易戦争の帰趨にかかわらず、中国での経済クライシスが顕在化した場合、日本の「局地バブル」は、先の「ファンドバブル」のように、一気に崩壊するだろう。その理由は明解である。

中国人と中国マネーは、私たち日本人が普通に考えるよりもボーダレスに世界を動き回っている。2015年前後、日本にもその一部がやって来て、都心の「局地バブル」エリアのマンションを「爆買い」していた。さすがにいまは「爆買い」とまでは言えないが、それなりの需要は続いている。

しかし、本国で経済クライシスが起これば、「爆買い」する余裕はおろか、それなりの需要さえも失われよう。

 

次いで注目したいのが、中国の外貨持ち出し制限だ。いまでも厳しく制限されているが、経済クライシスが顕在化すればさらに規制がかかって、ほぼ不可能になると予測できる。そうなると、彼らはキャッシュを得るために、「局地バブル」エリアなどに持つ不動産などを換金するはずだ。

そして最後に危惧されるのが、日本の不動産に対する「見切り」だ。そもそも、日本で起きた「局地バブル」の場合、世界的に見ればその値上がり幅はかわいいもので、せいぜい1.5倍程度にすぎない(他国の経済成長エリアでは、不動産価格が数年で倍以上になることも珍しくない)。

中国人は、日本の不動産が期待以上に値上がりしないことに気付き始めている。早晩、彼らは限りある外貨をより投資効率のいい地域へ移動させようとするだろう。

実はこの動きは、すでに起こりつつある。ここ1~2年で建物が竣工した都心や湾岸エリアのタワーマンションの中には、中古で売り出されている物件数がやたらと多いものが目立っているのだ。