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米中貿易戦争が日本のマンション市場に与える「悪夢のような影響」

「局地バブル」は崩壊寸前!

アメリカと中国の間で貿易戦争が始まった、と言われている。あるいは、あらたな米中冷戦の構図が築かれつつある、という論調も多くなった。先日行われたG20(20ヵ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議でも、摩擦の激化を危惧する声が上がったという。

それに加えて、中国国内では企業の社債デフォルト(債務不履行)が相次いでいるという報道がある。危機を招きそうになると弥縫策を重ねてきた中国のバブル経済も、いよいよそのツケを払わされる時期に差し掛かっているのかもしれない。

このように、世界の中でGDPの規模が1位と2位の国が経済面で対決するという図式や、その片方の国で経済危機が顕在化することが、日本の不動産市場、おもにマンション価格にどういう影響を及ぼすのか。『マンション格差』著者・榊淳司氏による論考。

「局地バブル」と「粗大ゴミ」化

まず、日本の不動産市場の現状を把握しておこう。

ひとことで言ってしまえば、日銀の黒田東彦総裁がETF(上場投資信託)やJ-REAT(不動産投資信託)の買い入れペース引き上げ等を発表した、2014年秋の「異次元金融緩和」第2弾を機に始まった、「局地バブル」が継続中である。

東京の都心(山手線の周縁エリア)や川崎市の一部、京都市の一部などで、需給関係だけでは説明できないレベルまでマンションの価格が上がっている。

この4年間、マンションだけでなく、オフィスビルやホテル用地なども高騰を続けた。リートは、10年前なら配当利回りが5%以上になる物件を基本に購入していたのに、いまや表面利回りが3%台の物件まで購入している。史上最低レベルの低金利でなければ、あり得ないほどの低利回りでの投資である。

 

一方で、「局地バブル」エリア以外の不動産価格には、「値がつかない」状況が続いている。少子高齢化と人口減少による住まいや店舗への需要縮小は、今や日本の大半の不動産を〝無価値化〟へと追い込んでいる。

「0円で住まいを譲ります」という物件を紹介するネットサイトが現れ、そういう企画のテレビ番組も放映された。また、買い手のつかないリゾートマンションなどを「維持費3年分の手数料で引き取る」ことをウリにビジネスする企業まで現れた。不動産が有料で処分される「粗大ゴミ」化してしまったのだ。

片やバブル的な値上がり。しかし、それ以外の不動産が無価値化、もしくはマイナスを生み出す「負」動産に――。この現状を私たちはどう理解すればよいのか?

いずれ崩壊する運命にある「バブル」

私が知る限り、ここ30年の間に不動産のバブルは2回あった。

1990年頃をピークにした「平成大バブル」と2008年のリーマンショックで崩壊した「ファンドバブル」である(今回の「局地バブル」は3回目)。

たしかに、回を重ねるごとにバブルが発生するエリアはどんどん狭まっている。「平成大バブル」の時は日本全国の不動産が値上がりした。「ファンドバブル」では地方の主要都市までも値上がりの波が及んだ。

ところが、今回の「局地バブル」は「局地」という通り、ほんの限られたエリアのみに過ぎない。「局地バブル」エリアでの不動産の値上がりは、インバウンドの増加によるホテル用地需要などを背景にしている面もある。

とはいえ、都心のタワーマンションの値上がりは、単純な〝バブル的熱狂〟でしかない。冷静に考えていただきたい。これまで人口増加の一途をたどってきた東京都でさえ、2020年代半ばから下降線に入ると予測されている。

そうである以上、よほどの立地条件(港区など)でない限り、新築マンション価格が1億円以上の物件(1ヵ月の家賃30万円×30年分以上もの価格)に合理的な根拠を見出すことはきわめて難しく、いくら「局地」とはいえ、いずれ崩壊する運命にあるのは間違いないのだ。